“患者由来”で末梢神経再生、京大などがバイオ3Dプリンター活用し治験
患者を募集
京都大学医学部付属病院の松田秀一教授と池口良輔准教授、京大大学院医学研究科の青山朋樹教授らとサイフューズ(東京都文京区)は、患者由来の細胞のみで作製した「3次元神経導管」を使って末梢神経の再生を促す治療法を開発した。バイオ3Dプリンターを使って作製した導管を移植し神経再生を促す。京大病院で医師主導治験を開始し、患者の募集を始めた。 医療系3Dプリンター、最新製品はどんなもの? 導管は、患者の皮膚を腹部などから2センチ×1センチメートル採取し、皮下にある線維芽細胞を培養し約2カ月で作製する。標準サイズは内径2ミリメートル、長さ24ミリメートル。神経細胞から情報を送り出す突起「軸索」の再生を促すたんぱく質などの因子が発現することで環境を整える。内部に軸索が通った後は線維芽細胞が神経細胞へ分化して定着する。 治験は手首より先の神経が外傷などで損傷した20―60歳の患者が対象。20ミリメートル以下の欠損で、損傷時から半年以内の登録を条件とする。2021年末までに3例の手術を実施予定。手術後は48週間の経過観察を行う。 手の末梢神経の損傷は指先の感覚がなくなる、筋肉の麻痺で動かなくなるなどの症状で仕事や日常生活に支障が出る。従来、他の部位から神経を移植する治療が主だったが、健常な神経の犠牲を伴っていた。人工神経は細胞成分の不足で神経再生を促す因子が十分でなかった。開発した導管は健常な神経の損傷なく良好な結果が期待できるという。