なぜ東京五輪の一部競技日程はアスリートファーストの原則を守れなかったのか?
東京五輪の競技スケジュールの詳細が16日、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会により発表された。「スーパーサタデー」「ゴールデンサンデー」と“命名”した土日に人気競技を集め大会が盛り上がる工夫はされているが、その一方で米国での独占放映権を持つNBCのプライムタイムの放映時間に合わせて、日本のメダルラッシュが予想される競泳やバレーボールの男女の3位決定戦、決勝、バスケットボールの決勝、女子サッカーの決勝、陸上競技の一部など米国での人気競技の決勝種目が午前から昼に開催されることになった。 特にアスリートの健康に多大な影響を与えそうなのが、炎天下の屋外で行われる男女400mハードル、110mハードル、男女走り幅跳び、一部投擲種目などの陸上の決勝種目と女子サッカーの決勝。 その日程について聞かれた組織委員会の室伏広治・スポーツディレクターは「決められた期間内で、健康に配慮した中で決めなければならない。サッカーならFIFA、陸上なら国際陸上競技連盟との調整の中、この時間帯がいいとのことで、各競技団体の中には、メディカルチームもいますし、IOCにもメディカルチームがいて、そういった中で全体として考えた中で決められたスケジュールだと思う」と答えたが、理由はよくわからなかった。 男女マラソンについては暑さ対策として当初の予定よりも1時間繰り上げて6時スタートとなり、50キロ競歩についても5時半スタートとなったことに相反するようなスケジューリング。メディカルチームが意見をしているならば、こんな時間に試合はさせないだろう。特にサッカーは、運動消費量が激しい。熱中症に襲われる選手が出てくるという不安がある。 組織委員会の説明によると、競技スケジュール作成には、アスリートファースト、IF(各国際競技連盟)の意見、競技の人気、ジェンダーバランス、円滑な運営など、6つの基準があり、それらを「総合的に判断してスケジュールを策定した」という。 だが、アスリートファーストという観点で言えば、水泳などの選手は、早朝から準備を始めなければならないなど、コンディション調整が難しい午前中の開催には疑問符がつく。 海外メディアから同じく米国の放映時間に合わせて午前中の決勝となった2008年の北京五輪では、水泳競技の選手から不評だったことについて質問が飛んだが、室伏スポーツディレクターは「このスケジュールに関しては、IOC、FINA(国際水泳連盟)の承認を得た。アスリートのアドバイス、意見も聞いてのこと。五輪全体を見ると、地元もそうだが、グローバルオーディエンス(海外のファン)に配慮した。全体的にバランスがとれていると思う。アスリートも事前にわかれば調整可能と聞いている。これに合わせてベストを尽くしてほしい」と答えた。 室伏スポーツディレクターは、ハンマー投げのアテネ五輪の金、ロンドン五輪の銅メダリストで、シドニー五輪から4大会の五輪を経験している。元アスリートが他人事のように話すことに違和感を覚えた。確かに競泳の決勝が午前に開催される日程については、すでに昨年から発表されており、準備の時間は十分にある。どの選手も条件は一緒だが、それでベストパフォーマンスが出せるのだろうか。