金(12月13日)
錬金術。人間のとめどない欲望を表す代名詞のようでもある。概して、好ましい使われ方はしない。錬金術師と言えば、どこかあやしい。陰で良からぬたくらみを画策しているイメージが付きまとう▼悪あがきとでも言おうか。卑金属を貴金属に変えようとする技術だ。辞書によると、歴史は紀元1世紀以前にさかのぼる。エジプトに始まり、アラビアを経て欧州に伝わったとされる。人気小説「ハリー・ポッター」でおなじみの賢者の石は、その化学変化をかなえる力を持つと信じられた▼世相を表す今年の漢字は「金」に決まった。日本の金メダルに沸いたパリ五輪・パラリンピックや「佐渡島の金山」の世界遺産登録が反映された。物価高が止まらない。新紙幣を手に、お金の価値を改めて考えさせられた一年でもある。一刻も早い清算を求められたのは裏金問題だろう。「政治とカネ」は、秋の衆院選の大きな争点となった▼政治家の地金が表れたと、考えたくはないが…。あらぬ錬金術だと、有権者はきついお灸[きゅう]を据え、最大与党は大きく議席を減らした。臨時国会では厳しい対応を迫られ続けている。金輪際、政治不信を招かぬよう、新年に向け値千金の法案を。<2024・12・13>