箱根巧者の青学大らしからぬミス。原晋監督は勝負に徹し切れていたか
今年の箱根駅伝で連覇を目指した青学大は往路で12位。トップの創価大に7分35秒差をつけられ、過去6大会で5度の総合優勝を手にしている名将・原晋監督も「ゲームオーバー」と表現とするほど大きく遅れた。しかし、復路のレース運びはすばらしかった。 【写真】神野大地が語る「箱根5区の攻略法」。 山の神はいかにして生まれるのか 6区の高橋勇輝(3年)がシード圏内(10位)に突入すると、7区の近藤幸太郎(2年)で7位、8区の岩見秀哉(4年)で5位、9区の飯田貴之(3年)で4位に浮上する。10区の中倉啓敦(2年)は、3位の東洋大に一度は追いつくも、最後は引き離されて4位でフィニッシュ。トップ3は逃したが、復路優勝を果たして前回王者のプライドを見せた。 「あのまま12位で終われば、『青学は弱いんだ。もう終わった』と思われる方がいらっしゃったと思うのですが、『やっぱり強い青学だった』と復路で少し証明ができました。負けには負けの美学がある。来年につながる負けだったと思いますね」 原監督の言葉には、いつものような魅惑的な響きがあった。しかし、あらためて振り返ると、5連覇を逃した2年前と同じような展開で、原監督は冷静さを欠いていたように思う。 今大会は青学大、東海大、駒澤大が「3強」とも言われていたが、駒澤大は序盤で流れに乗れず、東海大は4区が区間19位とブレーキに。そして青学大は、往路での「誤算」と「ミス」が順位に直結した。 その「誤算」は、3区に起用予定だった主将・神林勇太(4年)の右臀部仙骨の疲労骨折が、12月28日に判明したことだ。「3区・神林」は青学大の"骨格"ともいうべき区間だっただけに、その影響は大きかった。 エントリーの段階で、前回大会で2区を日本人1年生最高の1時間7分03秒(区間5位)で快走した岸本大紀(2年)が外れた。その穴を埋めるために1区と3区がポイントになっていた。
1区は高速レースにも対応できるように、キャリア十分の吉田圭太(4年)を起用。結果は前年(トップと18秒差の7位)とほぼ同じで、トップと18秒差の6位で発進する。劣勢が予想された2区は、全日本3区を区間3位と好走した中村唯翔(2年)が務めた。中村は13位まで順位を落としたが、区間タイムは1時間8分29秒(区間14位)とさほど悪くなかった。 3区でトップに立つ東海大(2区終了時で3位)と1分12秒差、総合優勝を飾った駒澤大(同8位)とは33秒差。前回の9区と、全日本の7区で区間賞を獲得している神林が3区を走れば、十分に巻き返すことができただろう。 しかし、3区に入った湯原慶吾(3年)は区間14位。順位をふたつ上げたものの、東海大と駒澤大の3区走者に2分26秒以上も引き離された。神林の戦線離脱は戦力ダウンだけでなく、湯原のメンタル面にも影響を与えたと考えられる。 そして何よりも痛かったのが、5区での大失速だ。原監督は竹石尚人(4年)に対して、「1時間10分半。悪くても1時間11分台で走れる」と読んでいた。竹石は区間記録(1時間10分25秒)に迫る走りを期待されていたわけだが、脚のケイレンで何度も立ち止まり、1時間15分59秒の区間17位に沈んだ。 竹石本人は「なかなか体が動かず、中盤以降に脚がケイレンしてしまいました。結果がすべてなので思うようにはいかなかった」と話している。その脚のケイレンがクローズアップされているが、大平台(7.0㎞地点)の通過タイムが18番目と、竹石は前半から精彩を欠いていた。 青学大には、前回5区で1時間10分40秒の区間2位(区間新)と活躍した飯田を同区間で使う選択肢もあっただけに、竹石の5区起用には首を傾げざるをえない。留年して2年ぶり3回目の山に挑んだ"実質5年生"の竹石は、上りの練習では飯田よりも強かったという。