「青春18きっぷ」大ブーイング やっぱり、新ルールは改悪か 利用者の本音とJRの狙い
青春18きっぷによる「機会損失」もあったかも
今回の改定は、青春18きっぷ廃止の布石という見方もある。しかし廃止するならやめれば良いだけで、手間をかける必要はない。商品を改定する理由は「そのほうが売れるから」「そのほうが利益につながるから」である。利用者目線で改悪であっても、サービスの提供側に利点があるはずだ。 11月12日の毎日新聞によると、青春18きっぷは2023年度に約62万枚売れたという。1枚1万2050円だから、約74億7100万円の売り上げだ。JRグループの総売り上げから見れば小さい数字かもしれないけれど、見過ごせない商いだ。2022年3月23日の日本経済新聞によれば、2019年度は約61万枚を発行したというから、コロナ禍からの回復どころか売り上げを増やしている。 その青春18きっぷを改定するのであれば、JR側にはそれを必然とするデータがあるはずだ。その1つとして考えられるのは、実際はネット上で反発するユーザーよりもバラ売り志向が少なく、3日程度の連続使用が多かった。だから5日間用を残しつつ、本命は3日連続用で、むしろ値下げという見方だ。実は私も、1~2日分を余らせて、もったいないから山手線で渋谷~新宿の往復に使った日もあった。 もう1つの背景は「JRホテルグループ加盟ホテルの宿泊割引廃止」だ。しかし正直、これはどうでもいい。そもそもJRホテルグループはシティホテルで、ビジネスホテルに比べるとランクが高い。そしてホテル業界は訪日観光客の増加で1泊当たりの単価が上がっている。JRホテルグループは主要駅、主要観光地にあるから、青春18きっぷユーザーを割り引く理由がない。 さらにいえば、JRホテルグループは青春18きっぷを愛用するような節約旅にふさわしくなかったし、JRホテルグループに泊まれるような人は青春18きっぷを使わずに、新幹線や特急など速くて快適な列車に乗っているはずだ。 実はここに、青春18きっぷの悩み「ユーザーの高齢化」がある。1980年代に青春18きっぷを楽しんだ人々が、40年経っても青春18きっぷを使い続ける。「実は18歳以上でも使えます」や「シニアにもお勧め」とあおるメディアもある。その結果、本来は新幹線や特急列車に乗っていただきたいお客が、青春18きっぷに固執する。実態として、高齢者の利用が多くなった。 そうなると、青春18きっぷで70億円を稼いでいたつもりが、80億円の機会損失となっていたかもしれない。これを解消したいという意図もありそうだ。あるいは、自動改札対応で実質値下げになるから今までより売れるはずだ。これが今回の改定理由だと想像する。