”新たな体験 新たな価値” 泡盛の未来を描く ユネスコ無形文化遺産登録
沖縄テレビ
泡盛業界が直面し続けている課題があります。2004年をピークに減少傾向に歯止めがかかっていないのが「泡盛の出荷量」です。2032年度には酒税の軽減措置が廃止され、業界を取り巻く状況は一層厳しくなることが予想されています。こうした中、県内の酒造所や卸売業では泡盛に新たな価値を生み出すべくあらゆる戦略を打ち奔走しています。 豊見城市の忠孝酒造。質の高い古酒を醸成するために甕の開発も手掛け、蔵元であり窯元でもある県内唯一の酒造所です。 泡盛文化の継承と創造を理念に掲げ、行われているのが「手造り泡盛体験」。「伝統的酒造り」の要件である原料となる米を蒸すことや麹菌を用いて撒麹をつくることなどの体験ができます。 「文化の継承」に加え、忠孝酒造では去年から泡盛の「価値の創造」に乗り出しています。 忠孝酒造大城勤社長「泡盛の素晴らしさをここで体験してもらう。」 大城勤社長自らが案内人を務め、泡盛が持つ様々な表情を知ってもらい、親しみやすい酒だと感じてもらうために考案されました。 まず、注いだばかりの泡盛の香りを試します。しばらく置いたあと、香りを比べると泡盛が持つ甘さや芳醇さはさらに強く。大城社長はこの変化を「香りが開く」と表現します。 大城社長「さっきの香りがどうなったか」「キャラメルの香りがします」大城社長「香りが開くというのが分かったでしょ。実感できる。次、これがバニラ。」「あとから(バニラの)香りがくるんですね。比べてみないと分からなかったですね」大城社長「未知との遭遇でしょ。」 大城勤社長「世界中から泡盛を飲みに行きたいというような流れになればいいな。こういったことで泡盛の文化というもの、価値観を伝えるというのがツアーの役割。」 年々出荷量が減少し「泡盛離れ」が叫ばれて久しいなか、伝統をつなぐために泡盛にあらゆる価値を加えその魅力を最大限に引き出していくことも酒造所の役目だと大城社長は考えています。 大城勤社長「泡盛というのは沖縄の誇りであるということを我々はずっとずっと言い続けないといけないし、あるいは誇りであると言わせるような作品づくり、泡盛造りを我々はやっていく。大きな課題と挑戦があると思います。」 泡盛の可能性を広げようとある挑戦を始めたのが酒造所ではなく酒類の卸売り業を展開する南島酒販です。 南島酒販 古謝雄基さん「挑戦的な泡盛を造ってどういった造りでやっているのか、製造者がどういった思いでやっているのかを踏まえながら世界的に評価されるような酒造りをしていく。」 その名も「shimmerプロジェクト」。県内の酒造所と二人三脚で今までにない製法や原料を使い、付加価値とブランド力の高い泡盛造りに取り組んでいます。 2022年11月から、これまでに県内12の酒造所とともにあわせて21種類の新たな泡盛を生み出してきました。 西原町の石川酒造場で行われたのは、貯蔵していた26年ものの古酒を再び蒸留するという県内で初めての試み。 南島酒販 古謝雄基さん「古酒をもう1回蒸留かけるのは泡盛メーカーの中でも前代未聞。」 古酒といっても様々で、味のバランスに難点のあったものをどう活用していくかは石川酒造場が抱える課題でもありました。再蒸留した古酒は300リットル。アルコール度数や味、香りの異なる15種類に分解した後、ブレンドし直しました。 石川酒造マスターブレンダー石川由美子部長「1つのお酒を15に分けてそれをブレンドすることで2つの全く違う資質のお酒ができたということにびっくりしているんですね。」 泡盛鑑評会で初代ベストブレンダーに選ばれた石川由美子さんの技能が存分に発揮されるなど、酒造所の強みを活かすのがshimmerプロジェクトの醍醐味です。 完成した「#11甕仕込」はアジア最大級の品評会、「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション」で最高金賞に輝くなど、高い評価を得ました。 さらに池原酒造の「#2白百合」も同じく最高金賞を受賞したほか、サトウキビから採取した新たな酵母で製造した恩納酒造所の「#19萬座原酒」が最高位であるベスト・オブ・ザ・ベストの称号を獲得しました。 恩納酒造所 佐渡山誠さん「私たちみたいな小さな酒屋が新しいことにチャレンジするというのはなかなかハードルが高かったりリスクがある。(プロジェクトで)動きやすいような体制でさせていただいたことが一番参加して大きかった。」 南島酒販は市場における泡盛の立ち位置を冷静に分析しながら、今後も泡盛の強みを最大限に活かしたブランド戦略を描いています。 南島酒販 古謝雄基さん「国内のバー業界や酒の高度数を飲むところに普及し沖縄の泡盛が日本国内で焼酎と小競り合いをするのではなく、海外でも一つのハードリカーとして認められる方向性で僕はできればと考えています。」 無形文化遺産への登録を弾みに世界にも泡盛の名を轟かせたいと価値を高め、可能性を拓くために情熱を注ぐ人々の姿があります。 忠孝酒造 大城勤社長「島のスピリッツから世界のスピリッツへ、島の酒から世界の酒へ、島の誇りから世界の誇り、泡盛を育てていきます。」
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