【独自】次世代電池APB 経営陣を「特別背任」で告発 福井県警が受理
世界初の「全樹脂電池」の開発を手掛けるAPB(福井県越前市)をめぐり、福井県警は社長の大島麿礼氏ら3人の取締役に特別背任罪の適用を求める刑事告発を、今月4日に正式に受理したことがテレビ東京の取材でわかった。告発したのはAPBの創業者で前社長の堀江英明氏。堀江氏は6月の取締役会で大島氏らにより社長を解職されていた。 全樹脂電池は発火の危険が少ないとされる次世代型のリチウムイオン電池で、将来のEV=電気自動車への搭載が期待されている。日産自動車で車載電池システムを開発した堀江氏は、2019年に独立しAPBを創業。2022年にはNEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)が約46億円の補助金の支援を決めるなど、世界初の量産化に向けて開発を進めていた。 堀江氏が警察に提出した書類によると、全樹脂電池の実用化に至っていないAPBは、今年6月時点で「新たな出資又は融資を受けられない場合には数カ月で資金が底をつき破綻することが見込まれていた」という。6月5日には、メインバンクの北国銀行から、開発者の堀江氏を「引き続き社長とすること」などを条件に、10億円の融資の意向を受けていた。しかし、当時の副社長の大島氏ら3人の取締役は、6月20日に堀江氏不在の「取締役会」をオンラインで開催し、堀江氏の社長解職を決議。さらに、大島氏を新たな社長とすることを決め、新体制で経営再建を進めることとした。これに対し堀江氏は、自身を解職することにより、「必要不可欠」な北国銀行からの10億円の融資の実行を「著しく困難にした」として、3人を特別背任罪で刑事告発していた。 刑事告発が受理されたことについて、テレビ東京は大島氏側にコメントを求めたが、得られなかった。
一連の経営の混乱のもとで、全樹脂電池の研究開発は事実上ストップしたままだ。北国銀行からの融資は現在まで実行されず、NEDOも先月19日までに支援の継続を停止した。大島氏ら新経営陣は、北国銀行に代わる新たな融資先を確保できていないとされ、APBの事業継続は見通しがたっていない。 告発を受理した福井県警は、今後大島氏ら取締役3人と、派遣した株主企業のTRIPLE-1(福岡市博多区)などへの捜査を開始するとみられる。 APBでは、関係者間で新たな支援先探しなどを継続しており、世界初の全樹脂電池の量産化を目指している。