「住宅ローンの××に注意!」という記事こそ注意すべき理由 不安をあおる仕組みと目的を知り財産を守る
銀行員として住宅ローンに関わっている私は、 「住宅ローンを組むなら××にはだまされないで!」 「住宅ローンの××には注意しましょう!」 という見出しを見るとつい読んでしまいます。 しかしながら、こうした記事の多くは必ずしも読者のためではなく、むしろこうした記事にこそ注意が必要です。
注目させたいだけの記事
これは、問題提起をして読者の耳目を引くのが目的です。 目を引くために、目立つタイトルを使う傾向があります。 またその内容も、 ・ 論拠が乏しいのに、あたかも事実のように断言するもの ・ 論理の飛躍やこじつけがある と言った内容が目立ちます。 ■記事の内容例1 ・ 住宅ローンの審査で、メガバンクより地方銀行の基準がゆるいのは、地方銀行が住宅ローン貸出を増やしたいから ・ 住宅ローンの審査で、返済比率を計算する際の想定金利を特定の金融機関で低めに設定しているのは、年収の低い人など、今までだったら借入できない人にも融資するため このような記事には疑問を感じてしまいます。 すべてが間違いとは言いませんが、しっかりとした情報源などが明示されていないからです。 たとえば「特定の金融機関は金利を低めに設定していることがわかりました」とありますが、記事の筆者は金融機関の人ではなく、どうして断言できるのでしょうか。 もし取材などにより、金融機関の職員が内情を明かしたなら、それは融資審査に関わる重要情報を漏らしたことになります。 あるいはそうした情報源がなく、筆者が推測で記事を書いているなら、これも問題があると感じます。
誘導するための記事
こうした記事では、不安をあおっておいて、そのための解決策を教えるという体裁をとりながら、最終的に何かに誘導しようとしています。 ■記事の内容例2 ・「住宅ローン破綻をしないためにはどうすれば良いか」という内容で、記事の中に任意売却のサイトのリンクがある ・「自宅を有効活用して老後資金を手にしましょう。そうすれば子どもに迷惑をかけずに済みます」と言った記事で、リバースモーゲージやリースバックの会社サイトに誘導する リバースモーゲージは、個人が自宅を担保にしてお金を借りる融資の一種です。 借りた人が死亡すると、そのまま土地を売却して借金を返済します。 高齢者向けに開発され、契約段階で子供が知らずにトラブルになるなど問題点もあります。 リースバックは、自宅を業者にいったん売却してお金を受け取り、今度はその業者に家賃を払い自宅に住み続けるという契約です。 当然、家賃の支払いが遅れると家を出て行かなければなりません。