超小型EVを150万円で。出光興産が自社SSで22年発売へ
トヨタが昨年末に発表した「C+Pod」に続き、出光興産も超小型EVを発売へ。いま各社が次世代モビリティに注目する理由とは? モータージャーナリストの会田 肇氏が解説する。 【写真で解説】150万円で買えるEVはどんな車?
ガソリンスタンドで超小型EVを買ったり借りたりできるようになる! そんな時代が来年(2022年)にも訪れそうだ。 出光興産は2月16日、タジマモーターコーポレーション(以下:タジマモーター)と超小型EVなどの次世代モビリティおよびサービスの開発を行う「株式会社出光タジマEV」を2021年4月に設立することで合意。21年10月に開催される東京モーターショーで生産モデルを公開し、翌22年には出光SSで販売する他、シェアリングサービスにも対応すると発表した。
個人ユースとビジネスユース合計で需要は約100万台を想定
新会社はタジマモーターの関連会社であるタジマEVに出光興産が出資し、商号を「出光タジマEV」へ変更した上で新たなスタートを切ることとなる。新会社の代表者は、タジマモーターの代表を務める田嶋伸博氏が兼務。新会社では出光のSSネットワークと素材開発技術を活用し、タジマモーターの車両設計の技術を融合することで年間100万台と予想される潜在的ニーズに応えられる超小型EVを開発するとしている。 この超小型EVとは、軽自動車に区分される中で最高速度を60km/h以下とした超小型モビリティを指す。これまで実用化を目指して日本各地で実証実験が実施されてきたが、2020年9月に国土交通省が道路運送車両法の施行規則を改正し、このカテゴリーを軽自動車の一つとして正式に区分したことで販売が可能になったものだ。 車体サイズは原付四輪と同じ全長2.5m以下、全幅1.3m以下。最高速度は60km/h以下に抑えられるが、それを周囲に示すことで衝突安全試験の一部を緩和・免除される(この区分の超小型モビリティには、最高時速60km以下の車両であることを車両後面の見やすい位置に表示する必要がある)。 出光興産とタジマモーターの両社はこれまで岐阜県高山市や千葉県館山市において、超小型EVを活用したシェアリングサービスの実証実験を実施してきた。出光興産の代表取締役社長である木藤俊一氏は、「この実証実験を通してわかったのは、地方部に限らず、さまざまなエリアにおいて異なる移動手段に対する多様なニーズがあること」と述べ、「そのニーズとは大きく個人ユースとビジネスユースに分けられる」とした。 個人ユースで想定されるのは、免許返納に伴って移動へのニーズが高まっている高年齢者層と、日々の買い物や子供の送り迎えに自動車を利用することに不安がある運転経験の浅い層となる。超小型EVは車両サイズが小さくて車両感覚がつかみやすく、最高速度も60km/hに抑えてあることで、運転に自信のない人たちにも取り扱いしやすいとの判断だ。 もう一つのビジネスユースについては、「一日の移動距離が15km未満の近隣営業を行う層にも一定の需要がある」(木藤社長)との認識を示し、これらは「車両稼働率も20%以下であるために軽自動車ほどの高い性能・機能は不要と感じている会社が少なくなかった」(木藤社長)という。ビジネスに必要十分なスペックを備えた超小型EVはそんなニーズにも最適というわけだ。