プロ野球 Bクラスでも監督続投の不思議
阪神・野村監督はファンに評価された
プロと名乗る限り、顧客満足度を高めることへの努力を怠っては、経営者は失格だ。それには、監督に対する期待値も含まれる。消去法的な続投にも、優しいファンは、「そうだな、怪我人多かったものな」、「これだけピッチャーがいなかったら誰がやっても勝てないだろうな」と応援してくれるだろうが、たとえ戦力が整っていなくとも、チャレンジできるような戦略を考えるのが、プロのフロントではないか。 阪神時代の野村克也監督は、2年連続最下位だったにも関わらず3年目も留任。結局、夫人の脱税事件が弾けて解任となったが、その問題がなければ4年目も続投だった。それはノムさんが、阪神の再建のために手がけた指導や、戦略、戦術が、フロントにもファンにも評価されていたからである。では中畑監督と森脇監督に負けても納得できる手腕があるか?
2位へと躍進させた千葉ロッテ
今季の千葉ロッテは、昨年、Bクラスに終わったチームから、ほとんど言っていいほど補強もなくスタートした。評論家の戦前予想にも最下位が並んだ。だが、伊東勤新監督は、育成扱いだった若手を抜擢するなど大胆な選手起用を実行、加えて、節目、節目でミーティングを行い、チームモチベーションを高めた。素晴らしいチームマネジメントを見せてチームを2位へと導いた。もちろん、監督一人では、絶対にチームは変革できない。戦力補強も含めてフロント、監督との一体作業であることは確かだ。しかし、落合博満氏が持論を展開するように、プロの世界であるがゆえ監督の評価は、結果においてされるべきで、監督によって、チームに何らかの変革を与えることは可能である。
勝つことが人気球団の宿命
阪神時代に安藤統男、吉田義男、村山実、中村勝、藤田平、吉田義男、野村克也、星野仙一、岡田彰布と8人もの監督交替を、ずっと側で見てきた元阪神のチームスコアラー、三宅博さんは、こんな私見を語っていた。 「和田監督が就任したときに私は彼にこう言いました。『Bクラスに落ちれば何年契約であっても首にされる。それが人気球団、阪神の宿命。ならば、後悔しないように自分のやりたいもの、欲しいものを遠慮せずフロントに要求して戦力を整えてもらいなさい』と。野球界では、勝てないけれど、人を育てるのがうまいなんて理由で監督を続けることはできないんです。特に巨人、阪神という人気球団は、フロントが許してもファンが許してくれません」 『勝負の世界の掟』とは、ファンに納得と期待を抱かせる『掟』でもある。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)