88歳のレジェンド作家が年末ミステリランキング3冠達成の偉業 「昭和24年の学園ミステリ」に込められた意味とは
12月15日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』が獲得した。 第2位は『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 第五部 女神の化身(4)』。第3位は『このミステリーがすごい! 2021年版』となった。 今週も『このミステリーがすごい! 2021年版』が3位にランクインし、年末恒例のミステリランキングが盛り上がっている。6位にランクインしたのは同ランキングで国内編1位を獲得した『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』。御年88歳のミステリ界のレジェンド辻真先さんによる本格ミステリだ。前年にGHQの指導のもと制度改正が行われ男女共学となった学園を舞台とし、大戦の敗北を受け民主教育に変わってゆく中で大人はどう振る舞い若者は何を感じていたのか。著者自らが経験してきた時代背景を存分に描いた青春学園ミステリとなっている。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2020」(文藝春秋)「ミステリが読みたい! ベスト10ランキング&ガイド 2021」(早川書房)でもそれぞれ国内編で1位を獲得しており3冠達成の栄誉となった。 書評家の杉江松恋さんは《半世紀近くになる作家歴の中で、辻が繰り返し書いてきたことがある。先の戦争がいかに嘘に塗れたもので、そのために若者の夢がどれだけ摘み取られてきたか、ということだ。本作でも、民主教育の上っ面だけをなぞって肚の中は変わらない教師たちの滑稽さ、ずるずると戦争を続けてきたことへの反省のなさが少年たちの視線から容赦なく描かれていく。若い読者に、大人の嘘を見極めろ、と促す小説でもある。》と評している。 学制改革で男女共学となった学園が舞台の青春ミステリー
1位『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』東野圭吾[著](光文社) 殆どの人が訪れたことのない平凡で小さな町。寂れた観光地。ようやく射した希望の光をコロナが奪い、さらに殺人事件が……。(光文社ウェブサイトより)