高評価の帝京大可児に苦戦しながらも終わってみれば青森山田が8強入り!
開始7分、先制点を奪ったのは帝京大可児(岐阜)だった。 相手陣内での素早いアクションからトップ下の遠藤颯(3年)が右MFの三品直哉(2年)にボールをつなぐ。これを左足で冷静にゲットし、盤石と思われた青森山田(青森)に冷水を浴びせた。 【フォトギャラリー】帝京大可児 vs 青森山田 だが、6分後に試合は振り出しに戻る。右SBの内田陽介(3年)の左からのロングスローに対してニアで合わせたキャプテンの藤原優大(3年)がバックヘッドで流し込んだ。「ねらった」のではなく、「ボールを後ろにそらせば、走ってきた誰かが決めてくれるだろう」とのイメージだった。 ラッキーパンチにほかならない。とはいえ、この一発で落ち着きを取り戻した青森山田は前半終了間際に再び内田のロングスローから松木玖生(2年)が押し込み、さらに60分、三度、内田のロングスロー絡みから3対1とし、突き放しにかかる。 帝京大可児はあきらめていなかった。そのわずか2分後、“10番”を背負う大森涼(3年)が左からの折り返しをワンタッチで仕留め、息を吹き返す。アディショナルタイムを含め、残り20分あまりで、1点差。勝負の行方はわからなくなった。 試合中、立ちっぱなしで戦況を見つめていた青森山田の黒田剛監督。口をついて出てくるのは反省点ばかりだ。 「先制される試合があまりないので、少し焦りが出たかもしれない。チームとして同じ方向を見ながら戦うために、もっとコミュニケーションが必要だった。後半に入って中盤の枚数を増やしてきた相手にうまく対応しきれなかった」 キャプテンの藤原も厳しい表情で、こう振り返る。 「守備の強度が足りない。日ごろから積み上げてきた球際の強さだったり、ハードワーク、切り替えといったベースの部分が半分も出せていない。どういうことなのか、しっかり見つめなおさなければいけない」 それでも終わってみれば、終了間際のPKを含め(キッカーはキャプテンの藤原)、4対2で青森山田が勝利を収め、8強入りを果たした。 ひとりひとりがスキルフルで、洗練されたサッカーを披露し、周囲からも高評価を得ていた帝京大可児が健闘むなしく、ここで大会をあとにする。仲井正剛監督は次のように総括した。 「マイボールの時間を増やすことがポイントだった。どんなに相手のプレッシャーがきつくてもそこを追求しようと選手たちに伝えていた。2点を取るところまではいったけれど、勝ちきれなかった。自分たちが目指すサッカーの精度を高めていくのが今後の課題」 優勝候補筆頭に挙げられている青森山田の次なる相手は堀越(東京A)だ。 (文・写真=小室功)