解説:プーチン氏が誇示する新型ミサイル「オレシュニク」、迎撃不可能は本当か?
11月21日、ロシアは新型の中距離弾道ミサイル「オレシュニク」でウクライナ東部のドニプロを攻撃した。 ロシア語でハシバミの木を意味する「オレシュニク」という名で知られるこの兵器がもたらした被害は、当局者によると限定的だった。 しかしプーチン大統領が「迎撃不可能」だとするオレシュニクが初めて実戦で使用されたことは、西側の軍事専門家の関心を集めている。 現場から回収されたこの中距離弾道ミサイル(IRBM)の破片について、専門家2人が調べたところ、目標地域に複数の弾頭が落下したことが判明した。これは大陸間弾道ミサイル(ICBM)に共通する特徴だ。 米カリフォルニア州ミドルベリー国際大学のジェームズ・マーティン不拡散研究センター東アジア不拡散プログラムディレクターのジェフリー・ルイスさんは次のように話す。 ジェームズ・マーティン不拡散研究センター ジェフリー・ルイスさん 「弾道ミサイルが発射され、すべてを宇宙空間に運び上げる。第1段が落下し、次に第2ロケットエンジンが落下する。そして弾頭部分が宇宙を漂う」 ルイスさんは、最も大きな残骸が弾頭容器の一部だと指摘。残骸のもう一方の大きな部分には誘導装置、燃料タンク、その他の電子機器が含まれていたという。 この弾頭容器は、独立して標的を定めることのできる複数の再突入体(MIRV)を搭載可能であり、各MIRVは弾頭を搭載し、別々の標的を攻撃することができる。 「宇宙空間を飛行する間、スラスタが噴射して弾頭容器を回転させ、弾頭をさまざまな場所に投下する。実際に見られたのは、弾頭容器がおそらく6個の弾頭を搭載し、それぞれの弾頭がさらに6個の小型弾頭を運んでいたということだ。つまり、基地に6個の小さなミサイルが6組ずつ衝突し、それぞれが少しずつ異なる場所に飛んでいった。これは弾頭容器を操作して、異なる場所にミサイルを投下できたためだ」(ルイスさん、以下同) 戦略国際問題研究所(CSIS)によると、このミサイルは核弾頭を搭載できるRS-26中距離弾道ミサイルを基本にしたもの。ルイスさんは、新しい設計ではRS-26からブースターを1段階減らし、その結果射程が短くなった可能性が高いと述べた。 プーチン大統領は、オレシュニクは極超音速ミサイルであり、迎撃は不可能だと述べた。しかしルイスさんをはじめ専門家は、この射程の弾道ミサイルはすべて極超音速であり、イスラエルや米国の迎撃ミサイルの一部はそれらを破壊するように設計されていると指摘した。 「このミサイルが秒速3.5キロで飛ぶと大騒ぎしているが、ICBMを最大射程距離まで発射すると、秒速7キロほどになる。つまり、その2倍の速度だ」 ウクライナ政府高官によると、ドニプロ攻撃に使用されたオレシュニクには爆発物がなく、被害はほとんどなかったと語った。しかしルイスさんは、再突入の速度自体が被害を引き起こすのに十分だったと述べた。 オレシュニク発射後にプーチン氏は演説し、この攻撃は、ウクライナによる米英製ミサイルを使ったロシア本土攻撃への報復だったと述べた。そのうえで戦争が、世界的紛争にエスカレートする恐れがあると警告した。 ロシア国防省はこの件に関するコメント要請に応じなかった。 ルイスさんは、ロシアによるこのタイプのミサイルの使用は軍事的というよりも心理的な戦術である可能性があると述べた。「もしその兵器が本質的に恐ろしいものなら、プーチン氏はただそれを使うだけでよかった。しかし、それだけでは十分ではない。彼はそれを使った後記者会見を開き、さらに2度目の記者会見で『これは本当に恐ろしい』と言わなければならなかったのだ」