<高校野球>元軟式監督が元プロ監督に勝利!
「1点でも返せばプレッシャーをかけることができると思っていた。杉尾のところ(7回一死二、三塁)でスクイズを出そうとも考えたが出せなかった。決めるところで1本が出なかった。ピッチャーのテンポを崩そうとセーフティなども仕掛けたが雰囲気に飲まれたね。私自身はどしっと構えることができたんだけど」 榊原監督は、そう言って試合を振り返った。 終わってみれば、ショートから転向して、まだ1年という2年生が98球の完封ショー。メガネ姿の原監督は、初の校歌を甲子園に流してくれたヒーローを讃えた。 「(県大会の)準決勝、決勝と調子が上がってきていたので、ちょうどいいピッチングをする頃だとは思っていたが、あそこまでやれるとは。ほんとに凄い選手。コントロールが素晴らしかった。ストレート、変化球が両サイドに決まっていたので、あれなら打てないと思っていた。完投してくれると思っていた」 両軍ベンチの采配と戦略の交錯した1回が勝敗を分けた。元プロ監督は、持ちえる戦術、戦略を総動員して、草海攻略にとりかかったが、守備やバッティングも含めて、野球センスの塊のような一人の2年生投手の才能の前にすべては、無に帰した。 「非常に勉強になった。本来、うちがやらねばならない相手の隙を見逃さない細かい野球を上田西さんにやられた。原監督に時間をかけて、しっかりと鍛えられたチームだった。高校野球で勝つには、草海君のようなピッチャーが理想的。もう一度、コツコツと作り直す」 監督就任1年で自身初の甲子園出場を果たした榊原監督は、そう言って軟式野球出身の原監督に敬意を示した。敗れた元プロ監督は、センバツに向けての捲土重来を誓い、元軟式監督は、2回戦の作新学院戦への準備を始める。甲子園には、指揮官の戦いというドラマも詰まっている。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)