中小企業経営者の子どもたち…なぜ「親の会社は継ぎたくない」と言うのか?
後継者不足は中小企業経営において大きな課題のひとつ。従業員や第三者への譲渡などの方法が増加していますが、一番に考えるのは子どもへの承継ではないでしょうか。昨今の子どもの承継意欲は、どれほどのものなのか、日本政策金融公庫総合研究所『子どもの事業承継意欲に関する調査』を通してみていきます。
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後継者の「継いだ理由」とは?
調査*は、昨年8月に行われ、以下(1)~(5)に該当する人を対象に行われました。 *事前調査として、全国の18歳から69歳までの2万件、詳細調査として、親(父、母、義父、義母)が経営している事業または経営していた事業について、以下のいずれかの類型に 該当する832件に対して行われた (1)承継者:親の事業を承継した人 (2)承継決定者:親の事業を承継することが決まっている人 (3)後継予備軍:親の事業を承継いしたい、承継してもよいと思っている人 (4)無関心層:親の事業を承継するつもりはない人 (5)未決定層:親の事業を承継するかどうか、まだ判断できない人 承継者を年齢別にみていくと、「60歳代」が36.5%、「50歳代」が32.6%と高く、承継決定者は「30歳代」、後継予備軍は「20歳代」がボリュームゾーンでした。一方、無関心層、未決定層も「20歳代」が最も多くなっています。 【事業承継意欲別、年齢分類】 ■承継者 「20歳代以下」36.5% 「30歳代」32.6% 「40歳代」22.5% 「50歳代」6.7% 「60歳代」1.7% ■承継決定者 「20歳代以下」25.8% 「30歳代」35.9% 「40歳代」22.5% 「50歳代」9.5% 「60歳代」6.2% ■後継予備軍 「20歳代以下」39.5% 「30歳代」31.8% 「40歳代」18.9% 「50歳代」8.2% 「60歳代」1.7% ■無関心層 「20歳代以下」28.1% 「30歳代」25.4% 「40歳代」19.9% 「50歳代」15.8% 「60歳代」10.7% ■未決定層 「20歳代以下」35.3% 「30歳代」26.1% 「40歳代」21.0% 「50歳代」14.3% 「60歳代」3.4% 出所:日本政策金融公庫総合研究所『子どもの事業承継意欲に関する調査』より 続いて、「継ぐ理由」と「継がない理由」をみていきましょう。 まず承継者、承継決定者、後継予備軍に、承継した(承継したい、承継してもいい)理由を尋ねたところ、承継決定者で最も多かったのは、「他に継ぐ人がいなかったから」で25.8%。親の事業への愛着を感じている傾向にあるのに対し、承継決定者や後継予備軍は「事業経営に興味があったから」が最も割合が高く、事業そのものに魅力を感じている傾向にあります。 【「継ぐ理由」上位5】 ■承継者 「他に継ぐ人がいなかったから」25.8% 「廃業させたくなかったから」19.4% 「経営している(経営していた)親に勧められたから」18.7% 「幼いころから継ぐつもりだったから」17.4% 「事業内容にやりがいを感じたから」「仕事の経験・知識や資格を生かしたかったから」13.5% ■承継決定者 「事業経営に興味があったから」35.7% 「自分は経営者に向いていると思ったから」20.0% 「事業内容にやりがいを感じたから」19.3% 「収入が増えると思ったから」13.6% 「他に継ぐ人がいなかったから」13.2% ■後継予備軍 「事業経営に興味があったから」33.8% 「事業内容にやりがいを感じたから」26.3% 「自分は経営者に向いていると思ったから」21.2% 「収入が増えると思ったから」19.7% 「収入が安定すると思ったから」「仕事の経験・知識や資格を生かしたかったから」15.2% 出所:日本政策金融公庫総合研究所『子どもの事業承継意欲に関する調査』より