《女性の心と体を救う「性差医療」》「女性専門外来」の医師をかかりつけ医にするメリットは「性差と個人のライフステージを考慮し総合的に診てもらえる」、その見つけ方は?
かかりつけ医を見つける方法とコツ
そうはいっても、自分に合ったかかりつけ医を見つけるのは簡単なことではない。 「まずは予防接種や自治体の無料健診をしっかり受けること。それはかかりつけ医を探すチャンスにもなります」と宮尾さんはアドバイスする。 「健診結果を聞く際に、心配事や自覚症状を話してみましょう。あなたの話を受け流すことなく、反応して興味を持ってくれるか否かがポイントです」 また、初診時に【1】これまでの病歴と現在の症状、【2】どういう医療機関にかかってきたか、【3】サプリメントを含めていま、どんな薬をのんでいるか、【4】両親、兄弟姉妹など血縁者の病歴(家族歴)など、個人の背景をきちんと聞いてくれる医師は、かかりつけ医の有力な候補だ。 「女性外来のキーワードは『傾聴と共感』です。それが当たり前に実践できる医師は、男性、女性にかかわらず、性差と加齢変化に代表される個々人の違いを認め、真摯に対応してくれる医師だと思います」
まだすべて解明されたわけではない
女性外来を選ぶうえで、大きな判断基準のひとつが、「自由診療」か「保険診療」かということ。疾病や機能障害であればもちろん保険診療で、自由診療にも美容医療やメンタルケアに力を入れるクリニックなど、魅力的な施設は多い。ただ、これまで見てきたように保険診療内でも、医師の裁量次第で女性に必要な医療は充分受けられる。 女性特有の症状をやわらげることが期待される漢方薬も、日本は西洋医学の医師免許保持者が保険診療内で漢方薬を処方できる唯一の国であり、3割負担で恩恵を享受できる。 性差医療に長けた医師であれば、漢方薬についての知見も深く、不調を整える選択肢として漢方薬をすすめるケースも多い。「漢方薬を試したい」という希望に応じられる医師か否かも選択ポイントになる。 かかりつけ医を見つけるヒントはまだある。「日本性差医学・医療学会」の認定医から探してみるのもいいだろう。 「日本性差医学・医療学会では、2021年に認定医と指導士の認定制度を立ち上げました。2024年1月現在、歯科医師を含む56名が認定されており、脳・心臓・腎臓・消化器からメンタルヘルスまで幅広い守備範囲の医師が揃っています」 2003年に設立された「女性医療ネットワーク」は、“女性医療を女性の健康と幸福に貢献できる総合医療として育てる”という志を共有する内科医と婦人科医が中心の団体で、幅広いエリアで女性外来やクリニックを見つけることができる。 ほかにも、更年期女性に詳しい医師らが所属する「日本女性医学学会」からも全国の老年内科の専門医を見つけることができる。 “女性外来産みの親”として知られ、80才を超えてなお現役で性差医療に取り組む循環器内科医の天野惠子さんが言う。 「女性のライフサイクルに伴って起こる不調は、まだすべてが解明されたわけではありません。まずは病気に性差があるということを知ることから始め、自分自身の体が発するメッセージに耳を傾けてください」 掲載したリストは、性差医療の名医たちが紹介する「女性外来のスペシャリスト」だ。これも参考に、人生を共に歩んでくれる医師を探してほしい。 ◆性差医療・女性外来の名医 医療のジェンダード・イノベーションはまだこれからだ。長らく男性中心で体系化されてきた医療を改革するには、それなりの時間がかかるだろう。 そして何より、治療を受ける女性たち自身の「診療データを蓄積していく」ことへの協力なしでは実現不可能だ。あなたの抱える不調、治療、克服という貴重な経験が、次世代の女性たちの糧になる。 ※女性セブン2024年11月28日号
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