【ボクシング】活況呈すライト級の逸材・宇津木がデビュー7連勝。
30日、東京・後楽園ホールで行われたライト級6回戦(DANGAN A級トーナメント予選)は、日本同級7位の宇津木秀(うつき・しゅう、26歳=ワタナベ)が、酒井孝之(30歳=花形)を2回58秒でTKO。戦績を7戦7勝(6KO)とした。 鮮やかな右で、酒井をなぎ倒した宇津木
上体をほんのわずか左に動かす仕種を入れて、ワンツーを放つ。この右ストレートが、酒井の両グローブの間を突き通すと、ものの見事にアゴの真正面を打ち据えた。一瞬間を置いて、酒井が後方にゆっくりと倒れ込む。そのままなぎ倒される形となった酒井を見て、レフェリーはノーカウントでストップした。近しく目にしていない、右ストレート一撃の、鮮やかなKOパンチ。「倒すつもりはなかったけれど。その前の動きがフェイントになったのかな。(酒井の)ガードが開いてるのはわかっていた」。宇津木本人が驚くほどの、会心の勝利だった。
初回開始5秒程度で、両者の間に“大きな差”があるのはわかった。宇津木のクイックな上体の動きに、酒井は反応を示さなかったからだ。おそらく、宇津木自身がそれを明白に感じ取ったことだろう。やや余裕を持ったように感じ取れたのは、シャープなストレート、フックの合間に、酒井の右、あるいは左フックを、嫌なタイミングで振られたからである。決して気を抜いたわけではなく、「落ち着いて動こうと思った」と宇津木は話すが、たとえ貰わずとも、そういうタイミングでも打たせないくらいの厳しい圧力をかけていきたかった。今後、高いステージで戦っていく選手と見込んでこその苦言だ。 とはいえ、「ジャブと、ジャブのフェイントからの左フックが効いたと思う」(宇津木)という攻撃、さらに右をフォローしてヒザを着かせ、2回にはさらにテンポを上げた攻撃にシフト。冒頭のKO劇へと一気につなげたのはさすがだった。 同級生で、ともにアマチュアボクシングに勤しんでいた東洋太平洋スーパーフェザー級王者・三代大訓(みしろ・ひろのり)とは、普段からスパーリングもこなし、切磋琢磨する間柄。「先を越されてしまった」と宇津木は苦笑いするが、ライト級転向を表明し、元WBO世界スーパーフェザー級王者・伊藤雅雪(横浜光)と12月に対する三代に、食らいついていく気はもちろんある。 国内ライト級には、日本、東洋太平洋、WBOアジアパシフィックと三冠王者・吉野修一郎(三迫)も君臨する。この宇津木も含めて、戦国乱世の幕が開いた気がする。
セミファイナルのライト級5回戦(賞金マッチ)は、サウスポー同士の対決。プロ3戦目(1勝1KO1分)の中井龍(なかい・りょう、22歳=角海老宝石)が、カシアス内藤の次男、内藤未来(28歳=E&Jカシアス)を強靭なフィジカルで押しまくり、接近戦でのショート連打の巧さも見せて3-0(48対47、49対46、49対46)判定勝利を収めた。 文_本間 暁 写真_小河原友信
ボクシング・マガジン編集部