社説:企業・団体の献金 自民の不正温床、禁止決断を
自民党のおごりと腐敗ぶりをみせつけた派閥裏金事件の発覚から、1年が過ぎた。 おざなりな対応で国民の怒りをかい、大敗した衆院選を受けてなお、反省も危機感も見えてこない自民と石破茂首相の言動はどうしたことか。 政治資金規正法の再改正に向け、国会には各党派から9法案が出されている。自民がしがみつく企業・団体献金を全面禁止し、抜け穴をふさぐ改革へ、石破氏が決断すべき時だ。 9法案の実質審議が始まった衆院政治改革特別委員会では、企業献金を認めた1970年の最高裁判例を根拠に、自民が「政治活動の自由は憲法上保障されている」とし、企業にも「表現の自由がある」と禁止に抵抗している。 党本部だけで年23億円を集め、権力の源泉でもあるだけに、上限規制や公開の強化で年内に幕引きを図りたいようだ。 ただ、野党も指摘するように判例は「公共の福祉に反しない」ことを前提にしている。 企業から多額の献金を受け取り、事業などを業界の有利に進むように省庁に働きかけるといった不祥事は何度も発覚している。事件化される度に自民の金権体質が問題になり、献金抑制や透明性向上を掲げた法改正を繰り返してきた。 しかるに「パーティー」で集めた献金を裏金化し、選挙をにらんだ支持者との飲み食いや、秘書増員に充てていたのが昨年来揺るがす事件の構図だ。 企業・団体献金が政策をゆがめ、公益を損なう負の側面を露呈させ、不正の温床にしたのはほかならぬ自民である。 憲法を持ち出す以前に、自分たちで作った法律を守らず、抜け穴探しや非課税の政治資金の隠し立てに奔走する党の病巣こそ省みなければならない。 自民は、党から議員に出す「政治活動費」も廃止といいながら、上限のない「公開方法工夫支出」を設ける案を示す。またぞろ同じ手口ではないか。 「抑制」や「透明化」では効果を上げなかった以上、企業・団体献金は禁じるほかない。 1994年に議員個人への企業・団体献金を禁じ、政党向けは5年後に検討する代わりに、公費の政党交付金が導入された。これに石破氏は「廃止の方向になった事実はない」という。 だが、法改正を実現した当時の河野洋平自民総裁は、衆院事務局の聞き取りに「5年後に見直しという条件で企業献金を廃止することで合意できた」と証言。「公費助成が実現したら、廃止しなければ絶対おかしい」と述べている。「二重取り」への強弁は聞き苦しい。 立民など4党派の禁止法案には、日本維新の会などが政治団体の献金が除外されていると同調していない。少数与党に対し、野党は結束して統一法案を作ってもらいたい。