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実は理に叶っていた「野手登板」、巨人・原監督の奥深さ

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Wedge

 そこまで物議を醸す問題なのだろうか。個人的には首をかしげている。6日の阪神―巨人戦(甲子園)で8回一死から巨人の増田大輝内野手が6番手としてマウンドに立った一件だ。8回のイニング頭から投げていた5番手の堀岡隼人投手は一死しか奪えず打者一巡の猛攻によって7失点する有様で、すでに11点の大量リードを許している展開だった。采配をふるった巨人・原辰徳監督に対し「野手をマウンドに送るなんてありえない」「勝負を放棄する姿勢はおかしい」などといった批判が大物OBを中心に沸き起こっている。

 しかし、批判的な声はあくまでも「一部」のようだ。多くのOBは原監督の采配を評価し、好意的な見解を示している。いつもは厳しい意見を向ける野球評論家の球界OB・張本勲氏も9日放送のTBS系情報番組「サンデーモーニング」にリモート出演し「私は原監督の采配を評価します」と述べ、次のようにも語っていた。  「賛否両論あると思いますね。ピッチャー側から言ったらピッチャーのプライドを傷つけられたということも分かりますし、監督の采配で言ったら、私はこれぐらいのことができるのは原監督しかいないと思います。なぜかと言うと、11対0でしょう。今日は負けゲームだと腹をくくっているわけです。そういう監督はまずいない。9回の裏まで9対0で負けて引っ繰り返されて負けたチームは過去いくらでもありますから。監督やってる人はもしや、ひょっとしたらという思いが非常に強いと思いますよ。この増田という選手は高校の時はピッチャーですから。そのことも考えて原は起用したと思います」  ネット上のコメントを見ても、原監督の采配を評価する声が圧倒的だ。逆に批判したOBには激しいバッシングが浴びせられ、炎上する流れになっている。  ここであらためて原監督という指揮官に「奥の深さ」を感じた。第一次政権の2002年6月18日、横浜ベイスターズ(当時)との試合で延長戦の最中、走者を一塁に置いて投手の桑田真澄(現評論家=敬称略)を代打に送り出したこともあった。「バスターをやらせたらチームトップクラス」という原監督の読み通り、桑田は初球にバントの構えからヒッティングを試み、打球を見事に左前へ運んだ。この一打が後の得点シーンを生み出し、チームは延長戦の末、5―3で勝利している。  第二次政権下の2009年9月4日・東京ヤクルトスワローズ戦では途中交代、負傷退場などで3人の捕手がいなくなり、延長12回から内野手登録の木村拓也(故人=敬称略)に捕手としてマスクを被らせたこともある。急造ながらも木村は無難に捕手をこなしながら3つのアウトをとり、チームの大ピンチを救ってドローへ導いた。これは確かに偶発的なアクシデントが重なった苦肉の起用だったが、木村本人のユーティリティープレーヤーとしての能力の高さもさることながら原監督の機転と決断がなければ、おそらく好結果には結びつかなかっただろう。  これら2つの例は「野手の投手起用」と、もちろんシチュエーションが微妙に違う。とはいえ、これら「投手の代打起用」と「野手の捕手起用」は原監督が過去に敢行した奇策であることに変わりはない。この2つの例はいずれも当時、話題騒然となり球界OBも含め周囲から絶賛された。結果としてこれらの奇策は成功し、チームも負けなかった――批判されなかったのは、そういう背景が大きく絡んでいるところもあったように思う。  もし、6日の阪神戦で巨人が9回に奇跡的な形で11点差を追いつき、ドローや大逆転勝利に結びつけていたとしたら、一部OBらの批判派は増田大を投手起用した原監督の采配を同じようにイチャモンをつけていただろうか。たぶん、この人たちは“ノー文句”だったはずである。  確立としては限りなく低いものの11点差を追いつく展開になることも心の片隅で期待する中、原監督らベンチは不測の事態を見据えて投手としての調整もさせていた増田大をマウンドへと送り出した。大方の予想を覆す格好で、その増田大は追加点を許さず二死を奪ってキッチリと仕事を成し遂げた。滅多打ちを食らってさらに試合をぐちゃぐちゃにしてしまったのならまだしも、振り返れば、ほぼ完ぺきにリリーフ成功へと漕ぎ着けているのだ。  そして、もしも9回表の攻撃で巨人が怒とうの反撃からタイスコア、あるいは引っ繰り返すようなまさかの展開となれば、9回裏、あるいは10回裏の時点で温存していた勝ちパターンのブルペン陣を投入することも可能になり、増田大の登板は“奇跡の逆転劇への足がかり”となっていたはずである。だから試合後に原監督が淡々と口にした「最善策ですね」という言葉は全くその通りであり、張本氏の指摘した「ひょっとしたらという思い」も抱いていたからこその奇策だった――。そう推察すれば、十分に辻褄は合う。

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