「障害のある兄弟姉妹の面倒を一生みなければダメ?」自身も「きょうだい児」の女性弁護士(42)「将来はよろしくねと幼少期から言われがちだから」
障害のある兄弟姉妹をもつ「きょうだい児」の立場から発信を続ける弁護士の藤木和子さん。近著『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと』では、当事者特有の悩みや不安に法律的な回答をしています。藤木さんが社会に向けて伝えたいこととは──。(全3回中の3回) 【写真】「もう家から離れたい」と感じていた時期も…海外に留学していた高校時代の藤木和子さんほか(全12枚)
■きょうだい児にはきょうだい児の人生があり自由なのだから ── 弁護士として多方面で活躍されています。主にどのような活動を? 藤木さん:きょうだい児のピアサポート(同じ立場の仲間による支え合い)グループ「きょうだい会」の運営にかかわったり、本の執筆やSNSで情報を発信しています。きょうだい児の方の相談も受けてきました。
── 相談は法律的なものが多いのでしょうか。 藤木さん:法律的な相談と、人生相談と、半々です。人生相談では進路選択に悩んでいる、恋愛や結婚で相手にどう伝えるか、親が亡くなってどうしようといった内容が多いですね。あとは、家を出たあと、親から帰ってこいと言われたり、残した家族が心配だったりして、戻るか悩んでいる方が多いです。家を出ても終わる問題じゃないんだなと感じますね。 ── 著書ではそんな悩みに対して法律家の立場からアドバイスされています。私も重度知的障害で自閉症の兄をもつ立場ですが、「きょうだい児が世話をすることは義務ではない」とわかっただけでも気分が楽になるところがありました。
藤木さん:将来にわたって障害のある兄弟姉妹の世話を自分がするべきかという悩みは多いですが、民法の条文にあるきょうだい間の扶養義務は、自分に余裕がある範囲で助ける弱い義務であり、世話をするかどうかはきょうだい児自身が選べます。憲法でも「個人の尊重」「幸福追求権」「自己決定権」が定められており、こうしなければならないという義務や強制はありません。 でも、きょうだい児は子どものころから、親や周囲に「将来はよろしくね」と言われがち。たとえ親の思いはそうであっても、きょうだい児にはきょうだい児の人生があって、自由であるということは伝えていきたいと思っています。そうはいっても、心情的には見て見ぬふりをしていいのかという問題もあって。自分は犠牲になりたくないけれど、見て見ぬふりはできないという方もいます。