特別な年のプロレス界の顔になる 全日本プロレスのエースが大勝負【連載vol.15】
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コロナ禍で「特別な2020年」も、残り1か月半。プロレス界も恒例のイベントの開催時期がずれ込むなど、異例続きだった。 【画像】諏訪魔と石川修司との「暴走大巨人」コンビは無敵 それでも年末の風物詩・全日本プロレスの「世界最強タッグ決定リーグ戦」は、例年通り開催。11月18日に開幕することになった。 優勝候補は世界タッグ王者・諏訪魔、石川修司組。一時は不仲が伝えられたが、関係を修復。プロレス大賞・最優秀タッグチーム賞4年連続受賞の金字塔を狙っている。 「不動のエース」諏訪魔はシングル3冠王座も保持する5冠王であり、大活躍だった2020年を有終の美で飾りたいところ。MVPにも手が届くかもしれない。 諏訪魔はリング上のファイトそのままに直情径行型。喜怒哀楽が激しいので誤解されることもあるが、実はとても純粋で優しい。ぶっきら棒なのは、人見知りで照れ屋の裏返しだろう。
人生の悲哀を乗り越えたレスラー諏訪魔
諏訪魔が以前、MCを務めていたネットテレビ番組「諏訪魔暴走TV」に出演した時のことだ。神奈川県藤沢市にあるスタジオに向かう途中、レトロな定食屋の前にさしかかった。 「ここの店、おばあちゃんが1人でやっているような古くて小さなお店なんだけど、いじめられた学校の帰りによく寄って玉子丼とか食べたんだ」とボソッとつぶやいた。 泣き顔のまま家に帰れば、親が心配する。だから、この店でひと息ついて元気を取り戻してから帰ったという。 「ここがあって本当に救われた。でも、今でもこの店の前を通る度に、辛かった事を思い出す」と悲しい目をした。 「いじめられっ子だった」と告白した諏訪魔は「世の中から、いじめがなくなることはない。きれいごと言うな、と思う。結局、逃げちゃダメなんだよ。俺を見て、人間はこんなに変われるということを知ってほしい」と熱く訴える。 最近ではいじめに関するコメントを封印しているが、いじめのニュースを目にする度に心を痛めているようだ。 「藤沢全部が思い出の地」と言うほど地元・藤沢をこよなく愛し、藤沢市民まつりでお寺プロレスを開催したり、神社の豆まきに「諏訪魔鬼」で登場したりと、地域の活性化にも積極的に貢献している。 そして、実家の隣に居を構えるなど親孝行の諏訪魔。10月に最愛のお父様が急逝されたが、その悲しみを乗り越えて、ゼウスを退け3冠ベルトも守り抜いた。「誰よりも応援してくれた親父に、長期政権を誓う」と決意も新たにしている。 人生の悲哀を乗り越え、人間力を高め、レスラーとしてもスケールアップした諏訪魔の暴走っぷりに注目だ。
柴田惣一