「馬上から失礼します」自己暗示で笑いを堪えた伊藤かずえ 19歳でドラマ初主演後に襲われた不安感と「通信講座で服飾を学んだその後」
──『ヤヌスの鏡』のドラマ化が、伊藤さんの提案だったとは! 伊藤さん:あのとき、いくらかもらっておけばよかった(笑)。まあ、それは冗談ですが、どうしてもやりたい役だったので、すごくショックでしたね。あの作品をやっていれば、演技力ももっと身についたんじゃないかなと。結局、杉浦幸ちゃんが演じてヒットしたのでよかったのですが、やっぱりちょっと悔しかったです。 ── 19歳で念願のドラマ初主演。仕事への向き合い方や心境に変化はありましたか?
伊藤さん:子役時代からずっとエキストラをやってきて、ようやく主役を掴むことができたので、すごく嬉しかったですね。エキストラのころは、嫌な扱いもたくさん受けました。あるベテラン俳優さんから、「エキストラなんかに弁当を食わせるな!」と言われたことも。そんな悔しい思いもエネルギーに変えてきました。 ただ、実際に主役をやってみて感じたのは、「演じることに関しては、主役も脇役もあまり関係ないんだな」ということ。それ以来、役にこだわる気持ちがなくなりましたね。ですが、大きな夢がひとつ叶ったことで、目標を見失い、急に先のことが不安になってしまったんです。この世界は、いつ仕事がなくなるかわからないし、先の保障なんてまったくない。そこで、手に職をつけようと、通信教育でパタンナーの勉強をして技術を身につけました。洋服が作れるようになったことで、「いざとなれば、自宅で内職くらいはできそうだな」と自信につながりました。気持ちに余裕が生まれたことで、再び役者の仕事に専念できるようになったんです。
PROFILE 伊藤かずえさん いとう・かずえ。1966年、神奈川県生まれ。1978年デビュー。85年に大映ドラマ『ポニーテールはふり向かない』(TBS系)で初主演。そのほか『不良少女とよばれて』『スクール☆ウォーズ』など、数々の大映ドラマに出演。その後も『ナースのお仕事』をはじめ数々の人気作品に出演。2022年には自身のYouTubeチャンネル『やっちゃえ伊藤かずえ』を開設。 取材・文/西尾英子 写真提供/伊藤かずえ
西尾英子