「馬上から失礼します」自己暗示で笑いを堪えた伊藤かずえ 19歳でドラマ初主演後に襲われた不安感と「通信講座で服飾を学んだその後」
── 歌はもう歌われないのですか?復活ライブとか。 伊藤さん:いえ、カラオケボックスで歌っているほうが気がラクです(笑)。 ── 当時の大映ドラマは、物語の展開やセリフなどが独特で、「クセの強さ」が魅力でした。 伊藤さん:話が奇想天外というか、まるで漫画のような展開で台本を読んでいてもおもしろかったですね。セリフも「印象に残るけど、普段使わないでしょ!?」という、突拍子のないものが多くて(笑)。『スクール☆ウォーズ』では、「馬上から失礼します」と馬に乗って登場。『不良少女と呼ばれて』で、いとうまい子ちゃんとケンカをするシーンでは、「生き残ったほうが、くたばったやつの骨壺を蹴飛ばすまでさ!」というセリフなどもありました。
── なんて罰当たりな(笑)。演じるときに思わず笑いそうになったりしないのですか? 伊藤さん:なりますよ。ただ、当時はフィルム撮影で、撮り直しをするにもお金がかかるので、NGを出すとめちゃめちゃ怒られました(笑)。だから、台本を読んで笑っちゃいそうなセリフは、あらかじめ思いっきり笑い倒しておいて、気持ちを落ち着かせてから、撮影に臨んでいました(笑)。 ── 見えないご苦労があったのですね。 伊藤さん:19歳のときに、『ポニーテールはふり向かない』で初めて主演を務めさせていただいたのですが、実をいうと、本当は『ヤヌスの鏡』がやりたかったんです。
■先の保証がまったくない不安 ──『ヤヌスの鏡』といえば、杉浦幸さん主演の人気ドラマでした。 伊藤さん:宮脇明子さんの漫画が原作なのですが、もともと作品の大ファンだったんです。主人公は優等生と不良少女という二重人格の設定。陰と陽のまったく違うキャラを演じわけてみたい!と心が躍りました。そこで、プロデューサーに「この作品、大映ドラマにぴったりだと思うんです。ぜひ私にやらせてください!」と、『ヤヌスの鏡』の漫画本を渡して、企画を直談判しました。でも、作品を読んだプロデューサーから、「この企画、俺にくれないか?かずえに合った作品を用意しているから」といただいたのが、『ポニーテールはふり向かない』でした。