14歳スイス人が体験した韓国の世界スカウト・ジャンボリー「混乱もあったけど楽しさも」
熱中症などが報道されたイベント、実際の参加者はどう感じた?
8月1日からほぼ2週間の予定で、韓国の西南部セマングムで、世界最大級の若者の合同キャンプ「第25回世界スカウトジャンボリー」が開催された。日本でも盛んに報道されたように、本大会は連日の真夏日への対策がおろそかだった。食事の提供や衛生管理も不十分だった。【岩澤里美】 参加者たちから批判の嵐が吹き荒れ、最大規模で参加したイギリスのスカウトたち4500人はキャンプからの撤退を決め、8月5日にソウルへ移動。アメリカやシンガポールのスカウトも撤退した。大会側と韓国政府は急きょ、各面の対策を講じた。しかし、台風6号の接近に備え、大会2週目の8日には、残っていた他国のスカウトたち3万7千人もキャンプ場を去ることに。1000台以上のバスで各地に散らばり、残りのプログラムを消化した。 【動画】アクティビティを体験して楽しむスカウトたち <スカウトがブームのスイスからは1400人が参加> 世界158カ国から4万3000人が参加した今回の大会。九州ほどの面積の小国スイスからは、1400人を超える大所帯が参加した。日本からの参加が約1500人だったから、スイスのほうが参加率は高かった。今回のスイス代表団は、これまでにスイスから海を越えた国でのジャンボリーへの参加の地としては過去最大規模だった。 今、スイスではスカウトがブームだ。2023年1月1日時点で、スイス全国に5万1000人以上のスカウト会員がいる(5歳以上から参加可、毎週土曜日に活動)。2015年以来、会員は増加の一途をたどっているという。ブームの理由は親などの影響──家族が参加していたから子に引き継がれる──ともいわれている。 筆者は、今回の世界スカウトジャンボリーに、ジャーナリストとしてというより親戚の子どもを見守るような立場で関心をもっていた。スイスからの1400人の中に、親しくしているスイス人の友人の息子ロビン君(仮名、14歳半)がいたからだ。筆者は、ロビン君のことは幼いころから知っている。ロビン君はサッカーやフロアボールが好きで、国内のサマーキャンプに何度も参加するなど屋外でのアクティビティに親しんできた。 4年毎に開催される世界スカウトジャンボリーの参加資格は、14~18歳(*)。この時期に1回だけ参加できるが、友人によると、代表団の指導者としてなら2回目も参加可能だ。ヨーロッパ、アフリカ、南アメリカを旅行したことがあるロビン君は、アジアには行ったことがなかった。大好きなスカウト活動が韓国でできるチャンスに、心を躍らせていた。スイス代表団は大会1週間前に韓国に入国し、市内観光などの事前プログラムが用意されていたことも、ロビン君には嬉しいことだった(*19歳以上は、指導者またはボランティアのヘルパーとして参加可能)。 今、ロビン君は新学期(新学年)が始まった。韓国での思い出について聞いてみたところ、大会の準備不足が露呈したとはえ、ポジティブな答えが返ってきた。 <乗り継ぎ便が往復ともキャンセルだったが> スイス代表団は小グループに分かれ、スイスと韓国をドイツ経由で往復した。ロビン君のグループは、スイス=ドイツの便が行きも帰りも欠航になった。そのため、韓国入りが1日半遅れた。ヨーロッパのフライトは、昨夏以来、コロナ禍がもたらした空港職員の人手不足により、遅延や欠航が続いている(昨夏、ヨーロッパの空港で、ロストバゲージが頻発したニュースを覚えている人も多いだろう)。昨年より状況は改善されているとはいえ、ロビン君たちのようなことがまだ起きるのだと驚いた。 ロビン君たちは、航空会社からお詫びとして水筒などのアメニティーをいくつかもらえた。そのため、ロビン君の不快感は消えたという。また、帰国時、仁川国際空港近くで宿泊したホテルがスパやフィットネス施設も備えていて非常に快適で、旅の終わりを心地よく締めくくれたとのことだった。 ちなみに、今回のジャンボリー・スイス代表団への参加費用は1人4100フラン(約67万円)だった。1000フラン(約16万円)がキャンプ代としてジャンボリー組織委員会に支払われ、残りは準備代や航空券代、事前プログラムの宿泊代などに充てられた。