「誰かにつながりますように」小さな本棚 しおり添え、新潟の寄付型書店から全国交流
新潟市中心部の地下街の一角に、無人の寄付型書店「めぐる本屋」がたたずんでいる。寄付する人は書店の棚に並べ、訪れた人は無料で持ち帰れる仕組み。本には寄付した人の思い出や伝えたいメッセージを記したしおりが添えてあり、小さな本棚が見知らぬ誰かとの交流を生んでいる。(共同通信=渡辺敦) 書店を開いたのは新潟市のフリーランス古川みなみさん(38)。子どもの頃から「本の虫」だった。使われなくなった電話ボックスを書店として活用している事例があると知り「小さなスペースがあれば自分も本屋ができる」と考えた。今春、経費削減を目指し、Xで本の寄付を呼びかけると、千葉県や大阪府から約80冊が集まった。 2024年5月、市内で開かれたイベントの露店で初出店した。最初の客は小学生の女の子で、絵本を選んだ。古川さんは「きょうだいに読み聞かせてあげるのかな」と想像を膨らませる。 他にも、高校生がビジネス書を手に取ったり、高齢者がインスタグラムの運用本を持ち帰ったりと意外性も。真剣な表情や笑顔で本を選ぶ姿に「本好きはたくさんいる」と手応えを感じた。
9月に地下街の一角で常設の書店が実現した。古川さんは月2回ほど様子を見に来て、本の出入りを確認するという。現在、2段のこぢんまりとした棚には絵本や小説など約100冊が並ぶ。聾学校を描いた作品には「この本が手話の架け橋になれば」、親子のやりとりを描いた絵本「きょうはなんのひ?」には「じんわりと温かい気持ちになりました。この『あったかい』が誰かにつながりますように」とのしおりが添えられている。 古川さんは「寄付した人の思いも受け取ってほしい」と期待を込める。今後は、本屋がない地域への出店や、車に本を載せた「移動型書店」にも取り組む考えだ。