優勝一夜明け会見を行う大の里＝茨城県阿見町の二所ノ関部屋（撮影・萩原悠久人）

大相撲秋場所で2度目の優勝を果たし、13勝2敗で大関昇進を確実にした関脇大の里（24）が千秋楽から一夜明けた23日、茨城・阿見町の二所ノ関部屋で会見に臨み、早くも看板力士としての自覚をにじませた。25日に開かれる11月の九州場所（10日初日、福岡国際センター）の番付編成会議と臨時理事会を経て昇進が正式に決まる。昇進伝達式で述べる口上は「白紙」とした。 昇進の早さに髪の伸びが追いつかず、大銀杏（おおいちょう）が結えない前代未聞の「ちょんまげ大関」となる大の里は、苦笑いを浮かべた。 「気持ちがついていかない。慣れませんね」。幕下10枚目格付け出しの初土俵から所要9場所での大関昇進は羽黒山、ともに幕下付け出しの豊山と雅山の12場所を抜いて昭和以降最速記録。心と体が慌てて現実を追いかける。 優勝争いに絡むことが責務とされ、挑戦を受ける地位となるが「立ち向かっていく気持ちがすべて。より一層頑張らないと。求められるものが大きくなる」。看板力士となる自覚を漂わせた。 「大の里」のしこ名は「相撲の神様」といわれ、大正から昭和初期にかけて活躍した元大関大ノ里からいただいた。師匠の二所ノ関親方（元横綱稀勢の里）が新弟子につけたいと希望。「の」と「ノ」は異なるが、親族の了承を取りつけて名乗った。 8月の夏巡業で青森県を訪れた際、大の里はこの元大関の出身地の藤崎町へ足を運び、大ノ里の兄の曽孫にあたる天内（あまない）司さん（71）と初対面した。浴衣地の反物を贈り、家系図を見せてもらった。「名力士の名前をいただいたからには、絶対にその番付にはいきたいと思っていた。こんなに早く追いつけて光栄です」。 故郷に力士の後援会ができることは珍しくない。だが、天内さんによると、藤崎町にも平田博幸町長を会長として商工会を中心に仮の後援会を立ち上げ、昇進を機に化粧まわしを贈呈する計画がスタート。募金活動も始まったという。地縁、血縁などがない土地に、しこ名を縁に芽吹いた応援の声がうれしい。（奥村展也） ★口上は「考える余裕もなかった」

25日には日本相撲協会から使者が二所ノ関部屋へ赴いて昇進を伝え、大の里は決意を表す「口上」を述べる。この日の会見では「何も考えていない。考える余裕もなかった」と話した。「真っ白、白紙です」とも語り、師匠らとも相談してこれから考えるという。ちなみに二所ノ関親方が平成23年九州場所後、大関に昇進した伝達式の口上は「謹んでお受けいたします。大関の名を汚さぬよう、精進します」だった。