高齢者と外国人は優遇するのに…鉄道会社はなぜ「若者」にだけ冷たい? 「青春18きっぷ」改悪問題のウラで囁かれる「サービス格差」
若者向けの格安フリー切符を発売せよ
青春18きっぷは実家の帰省などに利用する若者も非常に多く、今までの仕様では、1枚の切符を最大5人で使うことができたため、大学のゼミやサークルなどのグループ旅行でも利用できた。そういったメリットが、今回の改変で失われてしまった。おそらく、青春18きっぷユーザーのなかから、それなりの人数が高速バスなどに流れるのではないだろうか。 JR各社は、アクティブシニア向けの切符はしっかり残し、旅行商品を次々に発売する一方で、若者向けの切符はどんどん使い勝手を悪くしている。ターゲット層として若者を意識しているのは、アニメなどとコラボした旅行商品を発売しているJR東海くらいであろう。コロナ禍を経て、JRも会社ごとにかなり温度差が感じられるようになった。 取材を行っていると、JR東日本の社員のなかからも、大人の休日倶楽部パス並みの若者向けのフリー切符を出すべきだという声が聞かれた。「鉄道会社が鉄道を軽視しているのではないか」と考えている社員は少なくないと、前出のJR東日本の駅員は語る。 「地方のローカル線を廃線にする一方で、首都圏の駅ビルはどんどんリニューアルし、大都市一極集中を加速させてしまっている。不動産会社ではなく鉄道会社なのだから、鉄道の利用策をしっかりと考えるべきです。いくら民営化したとはいえ、鉄道は公有財産なのですから、もっと幅広い世代が楽しく鉄道を利用できる方策を講じるべきだと思います」 若者向けの格安フリー切符が発売されたら、どうなるだろう。“若者の旅行離れ”を語る識者が存在するが、それは一気に解消されることだろう。フリー切符で旅行の楽しさを感じた若者たちは、鉄道旅の虜になり、何十年先も鉄道を利用する顧客になってくれるはずである。鉄道会社は目先の利益を追求するのではなく、将来の利用者を育てる取り組みを始めるべきではないだろうか。 ライター・宮原多可志 デイリー新潮編集部
新潮社