ADHDの子どものために、学校側ができること。少しの工夫、便利な道具で子どもの困りごとを解消!
困りごとを解決できる道具を使用する
ADHDの子どもはLD(学習障害)をあわせもつことも多く、文字を読んだり、書いたりするのが苦手なケースがよく見られます。このようなときは、教材の工夫や支援ツールを利用することで、負担を減らすことができます。 たとえば、音読補助シートを使えば、読むべき行がひと目でわかるので、そこだけに注意を向けやすくなります。また、文字を書くのが苦手な子どもには、大きいマス目で行も広いものを用意するとよいでしょう。苦手な部分を補うために、必要に応じて、学習用端末の使用範囲を広げるなどの支援も必要です。 ■教材の工夫・支援ツールの導入 本人が苦手なことを無理にやらせるのではなく、困難を軽減するための教材や支援ツールを導入しましょう。
授業はわかりやすく、視覚化する工夫を
ADHDの子どもは同じ作業を長い時間集中しておこなうのは難しいので、授業は「スモールステップ」で進めるのがポイントです。 作業や課題を、一つずつ進めていきます。指示を出す際は、一度にあれこれ言わず、「〇ページを開きなさい」などのように、一つだけ指示するのがコツです。 このときに、ページを開いた教科書を見せるとよいでしょう。「聞く」だけよりも、「話す、書く、見る、触る」など、さまざまな感覚に訴えたほうが、関心を引くこ とができるからです。 マグネット付きの絵カードや指導用ビデオ、ブロック教材、具体物(りんごやボールなど)を、積極的に活用してみてください。一つの課題に取り組めたら、その都度、ほめてあげると意欲と自信につながります。テストや宿題も、できることから段階的に進めていきましょう。 ■授業中に必要な配慮 簡潔な指示を心掛けます。スモールステップで課題を区切りながら積み重ねていきましょう。途中に小休止があると、さらに集中力を保つことができます。 (1)指示は簡単に。1日の見通しを視覚化する スケジュールを視覚化して、見通しをもたせておくのもよい (2)クールダウンできる避難場所をつくる がまんできなくなったときに逃げ込める避難場所をつくっておく。保健室なら、養護教諭と連携して対応できる (3)個別に声をかける 課題に取り組むときは「あと5分だけ集中しよう」など声をかける。宿題は、状況に応じて難易度や量を調整する (4)配布物を配るなど動ける時間をつくる ずっと座っているのは苦痛になる。「配布物を配る、教材を持ってくる」などの仕事を与え、動ける時間を設けるとよい
榊原 洋一(お茶の水女子大学名誉教授)