小泉郵政解散を意識? 平成以降の主な解散 坂東太郎のよくわかる時事用語
(6)近いうち解散(2012年)
その「マニフェスト」がほぼ総崩れ状態となり、首相も鳩山由紀夫、菅直人とほぼ1年ごとに交代、民主党3人目の宰相となった野田佳彦首相(在任2011年9月2日~2012年12月26日)。マニフェストにない消費税増税法などを敵のはずの自民・公明との三党で合意し12年8月に成立させました。その際に野田首相は法が成立すれば「近いうちに国民に信を問う」と約束します。しかし党内でも異論が強かった増税に反発して小沢一郎元代表ら多くが造反。最後は09年であれだけ勝った議席が過半数割れする始末でした。 9月の自民党総裁選挙に勝った安倍晋三総裁は「近いうち」がなかなか来ないので「うそつき」批判を高めます。そこで11月の党首討論で野田首相は安倍総裁に「国会議員の定数削減などをやり遂げると約束したら解散してもいい」と持ちかけ、安倍総裁も応じたため、2日後に解散。結果は民主党惨敗、自民党圧勝で第二次安倍政権が誕生しました。 野田氏本人は信念を貫いたと評価する向きもありますが、少なくとも選挙に勝たせる政党の指揮官としては失格でしょう。そうでなくてもこの時期に民主党への落胆は大きかったのに敵と組んで増税し、仲間から離反された揚げ句「近いうち」を「うそつき」呼ばわりされて党首討論で「小学校の通知票に『野田君は正直の上にバカがつく』とあり、おやじは喜んでくれた」などと弁明しての解散では民主党員もたまったものではありません。
--------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。