がんを抱える少女と出会ったタトゥーだらけの青年の初恋 「ベイビーティース」を採点!
〈あらすじ〉
16歳の女子高生ミラ(エリザ・スカンレン)は、シドニーの駅のホームで、タトゥーだらけの青年モーゼス(トビー・ウォレス)と出会う。突然鼻血が出たミラを介抱してくれたお礼にと、家を追い出されて宿無しだというモーゼスを、ミラは自宅に招く。精神科医の父ヘンリー(ベン・メンデルソーン)と、精神的に不安定な母アナ(エシー・デイヴィス)は、がんが再発して闘病中の娘が、素行不良のモーゼスと関わることに反対する。ミラは抗がん剤の影響で髪が抜け、衰弱していくが、モーゼスへの初恋を謳歌する。ミラやアナが使用する鎮痛剤が目当てのモーゼスに、ヘンリーはある取り引きを提案する。
〈解説〉
病を患う少女と孤独な不良青年のラブストーリー。演劇界で活躍するシャノン・マーフィの長編監督デビュー作。117分。 中野翠(コラムニスト)★★★☆☆病気を持ち出されたら文句もつけづらいが、主役カップルに魅力感じず。青年を家に住まわせるという設定、強引では? 芝山幹郎(翻訳家)★★★☆☆映像のタッチや色彩設計は趣味のよさを窺わせるが、病気が表に出ると映画が肉離れを起こす。ポーズより人柄を見たい。 斎藤綾子(作家)★★★☆☆誰もが体験する確実に失われる時間の容赦なさを、慈しみに満ちた光景で浮き上がらせる。逃げきれない愛すら美しい。 森直人(映画評論家)★★★★☆綺麗事をいかに省くかの苦心が肝。人生に掛かる重圧を立体的に見つめ、「濃密な生」や「美しい朝」の訪れを模索する。 洞口依子(女優)★★★★☆あの少女から伝わる抜けそうな乳歯のあの覚束ない感覚。ビリー・アイリッシュ世代の咀嚼。監督デビュー作とは天晴れ。 『ベイビーティース』(豪) 新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイントほか全国順次公開中 https://babyteeth.jp/
「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年3月4日号