人事部とリーダーシップ(その2):リーダーの役割
人事部長の悩みは尽きません。経営陣からの無理難題、多様化する労務トラブル、バラバラに進んでしまったグループの人事制度……。障壁(Rock)にぶち当たり、揺さぶられる(Roll)日々を生きているのです。しかし、人事部長が悩んでいるようでは、人事部さらには会社全体が元気をなくしてしまいます。常に明るく元気に突き進んでいくにはどうすればいいのか? さまざまな企業で人事の要職を務めてきた有賀誠氏が、日本の人事部長に立ちはだかる悩みを克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。 みんなで前を向いて進もう! 人事部長の毎日はRock & Roll だぜ!――有賀 誠 前回、「リーダーシップ=目標を定め、チームを作り、成果を出す力」という定義をご紹介しました。言い換えると、それこそがリーダーの役割ということにもなります。
理念、使命、価値観
リーダーには、自分が長期的に目指すもの、また、自分が関わるチームやプロジェクトの目的を定め、それを仲間に伝え、けん引する責務があります。その目的を、理念と呼ぶこともできるでしょう。 「理念」は、「使命」と「価値観」からなります。すなわち、「使命(Vision:何をやるのか)」と「価値観(Values:どのようにやるのか)」を足し合わせると、それが「理念(Vision:自分(たち)自身の定義)」となります。 例えば、自動車メーカーの使命が一般的には「お客さまに喜んでもらえる車を作って売る」だとしても、その製品内容としては「速い車」「格好のいい車」「運転が楽しい車」「乗り心地がいい車」「燃費のいい車」「安全な車」「大勢を乗せることができる車」「荷物を多く運ぶことができる車」などと、多くの「使命」がありえます。 また、企業としても、「売上・利益を追求」「環境に優しく」「社会に貢献」「業界をリード」「人材を輩出」など、目指すべき「価値観」には多くの選択肢があるはずです。それらの「使命」と「価値観」を定め、合算をしたところで、企業目的である「理念」が定義されることになります。 「理念」の存在意義は、「自分たちが進むべき戦略の方向性、戻るべき軌道を定め、ブレをなくすこと」と「チームを結集させる旗となり、メンバーの思いと言動のベクトルを合わせること」の二点だと考えられます。例えば、壁にぶち当たった時や意見が割れた際、立ち返るべき憲章となるでしょうし、その存在がチームとしての求心力を生むことにもつながるでしょう。