韓国の花卉農家「葬儀場よりもデモ現場からの注文で飯を食ってます」
「今日の午後1時までに謹弔花輪を30個ほど送っていただけますか」 11月9日午前7時ごろ、京畿道果川市のある大手花園には、午前の早い時間帯から謹弔花輪を大量注文する電話が相次いだ。従業員5人が働く同花園には最近、同徳女子大事件などを皮切りにデモ現場に謹弔花輪を納品している。花園を10年以上営んできたというイ代表は「デモ現場から謹弔花輪の注文が、多い時で一度に数百個も入ってくる」と話す。大手花園でも、菊の冷蔵庫がいっぱいになることはほとんどない。イ代表は「近くの卸売花市場に行って菊を大量に買い入れることもある」とし「アルバイトまで使って、10人以上が徹夜しなければ注文を賄い切れない」という。 【写真】「うちのパパと寝た不倫女の新婦」 結婚式場に置かれた花輪
各種のデモや集会に常連として登場する謹弔花輪が、花卉(かき)農家の「ブルーオーシャン」として脚光を浴びている。花卉農家では「葬儀や結婚式よりも、デモ現場に送られる花輪の方が多い」という話が出回るほどだ。謹弔花輪を使ったデモは2000年代初めに登場したとされている。06年に忠清北道清原郡の梧倉産業団地内にある湖水公園の開発に反対する住民たちが、清原郡庁の入り口で謹弔花輪を使用したデモを行ったのが最初とされている。それ以降、各種の政治集会に散発的に登場していた謹弔花輪は、10年代に入って朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領の弾劾とチョ・グク元法務長官事件などを経て、瑞草洞や汝矣島などのデモ集会における「常連小道具」となった。最近ではアイドルなど芸能人のスキャンダルを糾弾する花輪デモで、芸能事務所が密集しているソウル市城東区聖水洞が頭を抱えている。 デモ現場の謹弔花輪は、正義や公正性、民主主義などの価値が死んでしまったことを意味している。「故人の冥福を謹んでお祈り申し上げます」といった追悼の言葉が書かれるはずのリボンには、「男女共学転換、決死反対」(同徳女子大デモ)、「司法部は死んだ」(李在明〈イ・ジェミョン〉令状棄却糾弾)、「韓東勲(ハン・ドンフン)非常対策委はトロイの木馬」(韓東勲反対デモ)のようなスローガンが書かれてある。ある花園事業主は「2016年に金英蘭(キム・ヨンラン)法(公務員の金品授受を取り締まる法律)が施行されて以来、停滞していた花輪の売り上げを各種のデモ集会で賄っている」とし「デモに花輪を送るアイデアを誰が出したのかは知らないが、ありがたくて涙が出る」という話も聞かれる。また別の事業主も「謹弔花輪は陶磁器の植木鉢が原価に含まれる蘭のような製品よりもマージン率がはるかに高い『金の卵』」と説明する。