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トランプ大統領を「命がけ選挙」に駆り立てる「破産」「訴追」の恐怖

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 新型コロナウイルスに感染しても3日で退院し、スーパースプレッダーとの揶揄を撥ね返して、選挙集会を再開したドナルド・トランプ米大統領。激戦州に乗り込んで「20年前より元気がみなぎっている」とダミ声で叫ぶ、まさに「命がけ」の選挙運動だ。敗北しても大統領選の結果を受け入れない、と今から宣言している。  過去の大統領が再選を目指した時は、ここまでなりふり構わない戦いではなかった。一期で敗北したジミー・カーター、ジョージ・ブッシュ(父)は粛々と負けを受け入れた。トランプの何が何でもホワイトハウスに居続けるという執念は驚嘆すべきだ。この絶対に負けられないとの固い決意の理由は何なのだろうか。  再選を果たし自分の正当性を世界中に認めさせたいという承認欲求だけではない、もっと切迫した事情が見えてくる。

ホワイトハウスを出たら破産か

 トランプの税逃れは誰もが想像していた。だから、2016、17年は連邦所得税を年間750ドル(8万円弱)しか払っていないという『ニューヨーク・タイムズ』の9月末の「特ダネ」も、オクトーバー・サプライズとはならなかった。  しかし、この報道で気になるのは、トランプが多額の借金を抱え、このままでは数年後には破産せざるを得ないとの予想の方だ。  同紙が納税報告書を入手して報じたトランプの懐事情を見てみよう。  カジノや航空会社、ゴルフ場、ホテルビジネスの破綻・不振で現在4億2100万ドル(約445億円)の債務を抱え、そのうち3億ドル超は4年以内に返済期限を迎えるという。負債総額10億ドルとの試算もある。住宅バブルの崩壊、新型コロナ蔓延による不況、そして経営センスのなさが原因だ。  この数字は驚くものではない。『ワシントン・ポスト』取材班が2016年に出版した『トランプ』(邦訳文藝春秋)によると、1990年代の段階で22の事業のうち、利益が出ているのはわずか3件で、負債は32億ドルに膨らんだという。金を貸していた銀行団は資産の売却や生活費の制限をトランプに約束させた。  2004年からテレビショーの『アプレンティス』が始まり、番組放映権料や出演料、そして「トランプ・ブランド」の商標を売ることでトランプは4億2700万ドルを稼いだ。だが、『アプレンティス』はトランプの移民差別発言に批判が高まり、2015年には終わった。ブランドもトランプの言動で米国内が社会的分断に陥った今、かつての儲けをもたらさない。  米国の国税庁である「内国歳入庁」(IRS)から脱税の疑いもかけられ係争中だ。もし脱税が認定されれば1億ドル以上の追徴となる。  米誌『フォーブス』のように、トランプの現金化可能な資産は25億ドルに上るとの推計もある。だが、それでも果たして年々膨らむ債務の返済に十分なのか、心もとない。  トランプが財政面で生き延びるには、大統領職を続けることが条件となる。コロナ禍で景気は沈滞したままだから、不動産ビジネスの展望は明るくない。だが、返済期限が迫る3億ドル超の債務も、大統領職についていれば返済期限の延期が可能だ。  一方で、選挙で敗北し民間人となれば、債務の返済延期は認められまい。裁判所に破産と認定され、フロリダ州の別荘など残る資産も没収される恐れがある。  最大の債務は、長年関係を続けるドイツ銀行からのものだ。最低でも1億2500万ドルに上るとされ、2023年と24年に返済期限を迎える。ドイツ銀行は米捜査当局から資金洗浄(マネーロンダリング)や外国への贈賄で捜査対象となっている。「米連邦準備制度理事会」(FRB)からも「重大な脆弱性を抱える」と指摘された。ただでさえ窮地のドイツ銀行が一民間人となったトランプの債務の返済期限延期を気前よく受け入れるとは思えない。