【50代の不調対策】誰にでも起こる「むくみ」「めまいや立ちくらみ」にも病気が隠れている?
年齢とともに増える不調「むくみ」や「めまい・立ちくらみ」。生活に支障をきたすほどでなければ放置しがちだが、不快なむくみやめまいの陰には、思いがけない病気が隠れていることも…。その状態や併発する症状などから考えうる、隠れた病気の可能性を総合診療医 竹村洋典さんに聞いた。
■むくみ
寝不足や運動不足、栄養の偏り、ストレスなどで、軽いむくみは誰にでも起こるが、ここでは注意が必要なむくみを紹介! ●全身のむくみ→腎不全、肝不全、心不全の疑い 「腎不全」になると、老廃物や余分な水分、塩分を体外に排泄できなくなってむくみに。尿量の減少が特徴だ。「肝不全」になると血液中の成分が体内ににじみ出て、特に腹水がたまる。代表的な症状は黄疸(おうだん)、食欲不振など。 「心不全」は、心臓の働きが低下することで毛細血管の血液が心臓に戻れなくなり、血液中の水分が体内ににじみ出てむくみが生じる。急激な体重増加、動いたときの息切れなどがおもな症状だ。 ●だるさ・悪寒・便秘を伴う、指で押してもへこまない→甲状腺機能低下症の疑い 甲状腺ホルモンが低下すると活動性や新陳代謝が落ち、顔や手足がむくみやすくなる。指で押してもへこまないのが特徴。 ●膝下のむくみ→慢性静脈不全症、うっ滞性皮膚炎の疑い 「慢性静脈不全症」は静脈の流れが阻害される病態で、その結果、皮膚に炎症が起こるのが「うっ滞性皮膚炎」。慢性静脈不全症は弾性ストッキングによる圧迫療法で治療が可能。 ●ふくらはぎのむくみと痛み→深部静脈血栓症の疑い 足の静脈にできる血栓で、長時間同じ姿勢で足を動かさないことなどが原因に。血栓が肺に移動して「肺血栓塞栓症」になると胸の痛みや呼吸困難も生じ、非常に危険。
■めまい・立ちくらみ
めまいには、大きくぐるぐる目が回る回転性、ふわふわする浮動性などがあり、考えられる原因・病気もそれぞれ違う。 ●立ちくらみ→起立性低血圧、貧血の疑い 「起立性低血圧」は、急に立ち上がることで脳に行く血流が減少するもの。「貧血」の多くは血液中の鉄分不足が原因。いずれも、原因疾患があったり生活に支障をきたすようなら治療が必要だ。 ●ふわふわ感→血液がアルカリ性に傾いている疑い 強い不安や緊張、パニック障害の発作などで過呼吸になると、本来、中性であるはずの血液がアルカリ性に傾く。すると、ふわふわしためまいが起きる。 ●平衡感覚がなくなる→目・耳・脳・神経・下肢の病気の複合が疑われる 体の状態は目や足からの情報、内耳の平衡感覚が脳に伝わり認識される。平衡感覚がとりにくいのはこれらの不調の可能性が。 ●回転性のめまい→良性発作性頭位めまい症、突発性難聴、メニエール病、前庭神経炎の疑い 「良性発作性頭位めまい症」は内耳の耳石が動いて体のバランスが乱れる病気。「メニエール病」は耳鳴りや難聴を伴うめまい発作。突然片耳が聞こえにくくなる「突発性難聴」は過度なストレスや疲労が誘因。風邪のあとに多い「前庭神経炎」は、内耳から脳への情報を伝える前庭神経の炎症だ。 年齢を問わず誰にでも起こることから、よくあることと放置しがちなむくみやめまい。併発する症状から重大な病気が隠れている場合はもちろんだが、「なんとなく不調」という場合でもかかりつけ医や総合診療医に相談することは大切だ。しっかり症状と向き合うことで、治療や対処法がみつかるだろう。 今回の話を伺った先生 竹村洋典さん 総合診療医。東京医科歯科大学医学部附属病院・総合診療科科長。同大学院 医歯学総合研究科 全人的医療開発学講座 総合診療医学分野教授。三重大学名誉教授 イラスト/しおたまこ 構成・原文/山村浩子