中国在住で“貧乏化”した女性の嘆き「ここまで惨めな境遇になるとは」
国家資格合格者や、大企業への新卒入社組など、一度レールに乗りさえすれば高年収が約束されていたはずの“勝ち組”たち。だが、そんな彼らも長引く不況や、新型コロナが追い打ちとなり、続々と高年収組から転落しているという。その崩壊の実体とは――?
庶民落ちした中国在住の日本人
「中国に来てここまで惨めな境遇になるとは、思いもしなかった」。現在、中国で暮らしている渡恵美さん(仮名・34歳)は、そう力なくつぶやいた。 渡さんが中国の地を踏んだのは今から10年前。地方の国立大学の大学院を卒業後、福建省の専門学校に日本語教員として就職した。学校から支払われる給料は6000元(当時のレートで約7万8000円)で、現地の中国人教員の倍額だった。 加えて、中国語に堪能な渡さんは、日本人相手にオンラインの中国語レッスンを行い、月5万~7万円の収入を得ていたという。現地の物価だと500mlのペットボトルの水が1元、地元のレストランで満腹になるまで食事をしても30元程度。住む場所も学校が提供する寮に無料で入居していたため、収入のほとんどを自由に使うことができたという。 「学校が夏休みに入ると、高速鉄道の一等車料を予約して旅行三昧でしたね。一杯20元のスタバのコーヒーを持って、一個1元の肉まんを買う労働者の横を通るときなんて、かなりの優越感でした」
中国人教員の給料が1.5倍に
だがそれも、3年もしないうちに風向きが変わり始めたという。 「中国は日本でいう高度経済成長期。周囲の人たちが裕福になっていくのを肌で感じました。なにより、私の給料は据え置きだったのに、3年前に中国人教員の給料が1.5倍になったんです。 都市開発のスピードも凄まじく、これまで私の寮の隣にあったボロボロの民家だらけだった集落が破壊されて3か月でマンションが建ちました。聞くと、1室14万元(日本円で150万円弱)だとか。それも1年たらずで満室になりました」
高度経済成長で取り残された
中国国家統計局の発表によると、中国民間企業の平均年収は、2011年時点で2万元(約32万円)程度だったのが、2019年には約5万3000元(約85万円)と、わずか8年で2.5倍にもなっている。 さらに、円高から円安に転じたのも、副業で日本円を得ている渡さんにとっては痛手だった。中国語レッスンで稼いだ5万円は、入職当時は3800元に換金できたが、今は3100元程度だ。 「最近では外資系レストランも多く出店して、中国人の先生たちは頻繁に足を運んでいるようです。そんな場所で食事をしたら200元はザラに飛んでいく。私はいつか日本に帰ったときのために貯金しなくてはいけないので、誘われても理由をつけて断っています」 たった10年で高所得者から庶民となった渡さん。貯金ができたら、仕事を辞めて帰国するつもりだという。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
bizSPA!フレッシュ 編集部