月2万1000円で楽しく暮らす漫画家・吉本浩二さん「お小遣いがもし10万円になったら? きっと使い切れないし、楽しくなくなっちゃう気がします」
コロナ禍で経済が一時ストップし、今冬は3割近くの人が「ボーナスが減る」と回答している。今あるお金で、より楽しむにはどうすればいいのか? 【画像】『定額制夫のこづかい万歳』のひとコマ そのヒントを、現在週刊マンガ誌『モーニング』(講談社)で『定額制夫のこづかい万歳~月額2万千円の金欠ライフ~』を連載中で、自身も月2万1000円のお小遣いで生活している漫画家の吉本浩二先生(47歳)に聞いた。 ちなみに吉本先生の『ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~』(秋田書店)は『このマンガがすごい!』2012年のオトコ編第1位になった名作ですよ。 ■一番の楽しみはお菓子 ――『こづかい万歳』は先生の体験談がもとなんですよね。 吉本 はい。月額2万1000円の生活を送っていますが、最近はようやく慣れてきたというか、むしろ心地いいときも出てきました(笑顔)。 ――でも正直、しんどくないですか。 吉本 僕は自己管理が苦手で、独身時代はちょっとしたものをだらだら買ってしまいがちだったんです。なので2013年に結婚し、妻にお金を管理してもらえるようになって、正直ホッとしました。当時の小遣いは3万円で、僕はお酒もたばこもやらないので、それなりに余裕がありましたね。 そして3年前にふたり目の子供が生まれて小遣いが2万1000円になって。当初はきついと思うことも正直ありましたが、今はやりくりも楽しんでます。
――実際、どんな生活を? 吉本 一度マンガでも使い道を円グラフにしたことがありますが、一番の楽しみはお菓子。月1万円は費やしてますね。 ――趣味のアイテムや仕事に必要なものが欲しくても、買えないことはないですか。 吉本 仕事に必要なものは妻と相談して決めています。例えば執筆を一部デジタルにしたときは、さすがに機材が高いので出してもらいました。でも仕事部屋のLED電球は認められなくて......。自分で買ったんですよ。3つで5100円です。 この間は、パソコンで目が疲れるのでブルーライトカットのメガネを買ってほしいって頼んだんですけど、これもダメで、1万円かかりました。今月はお菓子代を捻出するのがキツかったなぁ。 ■我慢する喜びって? ――『こづかい万歳』は、先生をはじめ登場人物の皆さん、誰も悲壮(ひそう)感ないですよね。 吉本 そうですね。例えば、残金の数百円で自分の好きなお菓子を選んで買うのって、自分が試されているようでドキドキするんですよ。そこで悩みに悩んで買ったエリーゼや歌舞伎揚を頬張る。これが最高にうまい。 シチュエーションも楽しみがいがあります。僕が一番好きなのは、妻と子供が寝静まった深夜、コソコソと家を抜け出し、コンビニに行ってお菓子を選ぶ。まるでいけないことをしているような気分になってきて、この状態で食べるお菓子が、これまたたまらないんです。 ――吉本先生のようにポジティブになるにはどうしたらいいんでしょう。 吉本 えぇ......、そんなアドバイスなんて大それたものはないんですけど(笑)、我慢する喜びに気づけたのは大きかったなぁ。 僕のマンガには、生活のすべてをPontaカード経済圏にささげてため込んだポイントで贅沢(ぜいたく)をしている人や、「小遣いが月末多く残っていたほうが勝ち」というバトルをしている夫婦といった、僕よりすごい倹約家がたくさん出てくるんですが、彼らはみんな我慢を楽しんでいる気がします。