なぜ性別変更した元女子世界王者の真道ゴーは男子のプロリング挑戦を決断したのか…ライセンス交付に立ちはだかるJBC破綻問題
真道は4月5日に西日本プロボクシング協会の理事5人の前で男子ボクサーとしての力量をチェックする“テストスパー”を行い、「十分にプロとしてできる」とのお墨付きをもらい、12日の日本プロボクシング協会の理事会でも承認され、13日にプロテスト受験と、ライセンス交付を求める嘆願書がJBCに提出された。 本石会長は5月15日に大阪で開催されるプロテスト受験を希望している。 なぜなら7月18日に35歳の誕生日を迎える真道は、ここでライセンスを取得しておかねば、年齢制限にひっかかりプロになれないからだ。だが、国内では初となる性転換選手に対するライセンス承認の是非を議論、検討する前に予期せぬ壁が立ちはだかった。 財政破綻したJBCは、3月末日をもって財団法人を解散。現在は、清算法人としての活動のみが認められている状況で、プロテストやライセンス承認などの新規事業は行えない。 これまでJBCの永田有平理事長は筆者に「世界的に進んでいるジェンダーフリーの考え方を我々も尊重したい。ただ選手の安全、健康を守るのが、我々の仕事。あらゆる方面の専門家の方々の意見を聞きながら、前向きに検討していきたい」と、性転換ボクサーのライセンス承認に前向きな姿勢を明かしていた。 米のカリフォルニア州では認められており、2018年にはアマチュア王者のパトリシオ・マニュエルが性転換ボクサーとしてプロのリングで勝った例もある。だが、清算法人となったJBCは、現在、新規にライセンスを交付する業務はできないのだ。 また一方で真道が投与している男性ホルモン(テストステロン)などがドーピングの禁止薬物に相当するため性転換ボクサーに対する特別ルールを定めてからでないとライセンス承認に踏み出せないという事情もある。永田理事長が言うように、安全性を担保するためにも、医学やジェンダーの専門家の意見を聞く委員会を開いた上で結論を出さねばならない。 現在、JBCと日本プロボクシング協会が、財団法人のJBCを復活させる方向で具体的な協議を続けているが、5月15日のプロテストに間に合うかは不透明だ。 本石会長は「プロテストという順序が必要だと考えていたが、清算作業に入っているJBCがプロテストを開催できない状況であるなら女子ボクサー時代に取得していたライセンスの再発行という形での手続きが行えないかを直接、お願いしてみたい。年齢制限というリミットもあるので」と、来週にもJBCを訪れて、直談判する考えを明かした。 事情が事情だけに真道のリング復帰に関しては、35歳の誕生日の7月18日をリミットにするのではなく特別な救済措置が必要だろう。