なぜ性別変更した元女子世界王者の真道ゴーは男子のプロリング挑戦を決断したのか…ライセンス交付に立ちはだかるJBC破綻問題
ボクシングの元WBC女子世界フライ級王者で、男性への性別適合手術と戸籍変更を行った真道ゴー(本名・橋本浩、旧名・橋本めぐみ、34、グリーンツダ)が21日、大阪市内の同ジムで記者会見を行い、男性としてプロのリング復帰に挑戦することを表明した。現役時代に性同一性障害を公表し、2017年に女子選手としては引退したが、当時から男子選手として復帰する夢を抱いており、一般女性と結婚後に授かった子供たちの後押しや、児童を支援する福祉事業会社の経営者として「輝く姿を見せたい」との思いにかられ「イバラの道」への挑戦を決断した。目標は「まず1勝」。日本プロボクシング協会も全会一致でバックアップを決め5月15日のプロテストを受験できるように求める嘆願書を日本ボクシングコミッション(JBC)に提出しているが、国内初となる性転換ボクサーのライセンスの承認を議論、検討をする前に予期せぬ問題が立ちはだかっている。
「イバラの道。中途半端な気持ちでは上がれない」
ダークジャケットで決め、精悍に日焼けした真道は、晴れ晴れとした表情で会見の席に着き決意を語った。 「生きる楽しみを作ってくれたのがボクシング。いろんな葛藤があるなかで29歳を最後に戸籍を変えた。ボクシングが嫌でやめたくてやめたわけじゃない。自分の中で男子に挑戦してみたい気持ちがあった。ボクシングが過酷なスポーツであることはわかっている。どれだけイバラの道かも。中途半端な気持ちでは上がれない」 真道は、女性ボクサー時代に20戦16勝(11KO)4敗の戦績を残し、2013年にWBC世界のベルトを奪取した。2度防衛後に王座陥落、2016年6月に5階級制覇王者である藤岡奈穂子の持つバンタム級王座に挑戦したが完敗し、翌年に性別適合手術と戸籍変更を終えて男性となり、一般女性と結婚して引退を表明した。その際、男子ボクサーとしてリングに上がる夢を語った。 「勢いで言った。戸籍を変更するとき男と思われたいとの願望があった」 その後、双子の誕生、自ら経営者として福祉事業を立ち上げるなど、夢への挑戦に集中できない環境にあり、「4、5年はボクシングはしていなかった」という。 だが、昨夏に心の中に温めていた思いが動く。自分に「何がしたいか」と問い、和歌山で経営している福祉事業会社「真道」に通ってくる子供たちに「輝く姿を見せたい」と考えるようになった。3人の我が子にも「パパはなぜボクシングをしないの?」と尋ねられ、会社のスタッフには「代表にしかできない道を歩むのが代表らしい」と言葉をかけられた。 思い余って本石昌也会長の元を訪ねて、相談するとバックアップを約束してくれた。