《ウクライナ写真ルポ》「私はこの土地で死にたい」陥落目前の街でも避難しない老夫婦の無事を祈る
(小峯 弘四郎:カメラマン) ■ 「ここが落ちることはまずない」はずの街に出た避難指示 【現地写真多数】「この土地で死にたい」と避難を拒み続ける老夫婦の決然たる表情 2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以来、筆者は数回にわたって長期的に現地入りし、戦争に翻弄される現地の様子を写真で伝えてきた。日本における昨今の報道では、8月初旬にウクライナ軍が開始したロシア領への越境攻撃に関するものが目立つ。 だが、7月半ばから再び現地で取材を続けている筆者の目と耳に入る情報によると、必ずしもウクライナが優勢になっているわけではないようだ。 たとえば東部ドネツク州の主要都市ポクロフスク。ウクライナの防衛拠点となっており、この地域の交通の要所でもあるが、陥落するのは時間の問題だと言われている。8月19日にウクライナ政府はポクロフスク市周辺の地域から、子供とその家族に対し避難を指示している。 以前、現地に住むウクライナ人が「ポクロフスクは2014年からのロシアとの戦いで一度も占領されたことがなく、ここが落ちることはまずない」と断言していたことが印象に残っている。そのポクロフスクにロシア軍が迫ってきており、今後の東部戦線のターニングポイントになるとの声もある。 避難指示が出た時点で、住民に残された時間は2週間程度と言われていたが、ロシア軍が北部へ兵力を移動したという情報もあり、本記事をまとめている9月7日(日本時間)時点ではなんとか持ちこたえているようだ。 それでも取材していると、日増しにロシアの支配地域が迫ってきていることを実感する。現地入りしたときは平穏だった村が、2日後には携帯の電波が途絶え、人の気配がほぼ消えてしまうようなこともあった。 今回、筆者は、ウクライナ戦争の開始以来、住民の救出活動を支援しているポーランド人映画監督セバスティアン・プウォチャルスキさんに同行し、その活動を取材した。避難を強いられた人々は、戸惑いの中、また戻ってくることを信じて、限られた荷物だけを持って避難をしている。遠くの街にある避難施設で心休まらない日々を送る人も少なくない。 以下では、ポクロフスクでの救出活動の様子を、写真を中心にお届けする(写真はすべて筆者撮影)。 (本記事には多数の写真が含まれています。配信先のサイトで写真が表示されていない場合は、オリジナルサイト「JBpress」のページでお読みください)