「Bunny Girl」でAKASAKIは親に認められるのか? / 京本大我ソロ曲に感じるhideへの熱いリスペクト
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで10月4日から10月10日にかけて集計されたミュージックビデオランキング、および急上昇ランキングの中から要注目トピックをピックアップします。 【動画はこちら】hideをリスペクト?京本大我ソロ曲MV(そのほかの記事中で言及しているMVも) 文 / 真貝聡 ■ まずはこの週の初登場曲の振り返りから 今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、6位にMISAMOが安室奈美恵の名曲「NEW LOOK」をカバーしたMVが登場した。MISAMOはTWICEの日本人メンバーMINA、SANA、MOMOによるユニット。YouTubeのコメント欄では彼女たちのファンからだけでなく、「安室ファンのアラサーです。当時引退した時はたくさん泣きましたが、引退される時に安室ちゃんから『これからも素敵な音楽にたくさん出会ってください』という言葉を思い出しました。MISAMOが歌う新しいNEWLOOKに出会えたことが本当に嬉しくて幸せです」(原文ママ)という喜びの声など、多くの安室ファンからの書き込みで盛り上がっている。 39位には櫻坂46の10thシングル「I want tomorrow to come」に収録されるBACKS曲「僕は僕を好きになれない」がランクインした。三期生の村井優がセンターを務めたこの曲のMVは、屏風や畳など和のムードが漂う世界観の中で魅せる村井のアクロバティックなダンスが話題になっている。 48位にはじんの「Summering」がランクイン。「入道雲は きっと / 紙に描いた 落書きでした」や「過ぎ去る夏を / 何度も書き捨てて / 失う決心が 付いたのです」など、いつかの自分に思いを馳せるエモーショナルな歌詞に思わず胸が締め付けられる。MVを手がけたのはクリエイターのしづ。じんとタッグを組むのは、2018年に発表された「アディショナルメモリー」以来6年ぶりとなる。しづが「自分なりの夏の為の葬式です」とコメントしているように、MVに描かれている喪服姿の青年が歌詞の魅力を増幅している。 52位には、にじさんじ所属の加賀美ハヤト、剣持刀也、不破湊、甲斐田晴によるユニット・ROF-MAOの「情熱的ボーイ」が登場した。同曲の作詞・作曲・編曲はORANGE RANGEのNAOTOが担当。1曲通して天井知らずのハイテンションさを貫き通した、元気になれる楽曲だ。 ガールズグループ、アイドル、ボカロPなどさまざまなジャンルのアーティストの楽曲が並んだ今週は、下記の4曲をピックアップした。 ■ AKASAKI「Bunny Girl」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場12位 AKASAKIは18歳、高校3年生のシンガーソングライター。16才で音楽活動を始めて、1年後にTikTokに投稿したオリジナル曲「弾きこもり」がバイラルヒットとなり注目を浴びた。朝日新聞デジタルで連載されている「いしわたり淳治のWORD HUNT」の今年7月29日公開の記事で、いしわたり淳治は2曲目のシングル「波まかせ」を取り上げて「これからの活動が楽しみな新しい才能を見つけた」とAKASAKIを高く評価している。 そんなAKASAKIは7月に新曲「Bunny Girl」の一部を自室で演奏している動画をTikTokに投稿。すぐさまこの曲がトレンドになり、フルバージョンを聴きたいという声が次々と寄せられることになった。 10月2日にシングルが配信リリースされるのと同時にYouTubeでリリックビデオが公開されると、同月5日には安田大サーカスのクロちゃんがX(Twitter)で「えぐいねー。めっちゃ好き。高校3年生なんだね。才能えぐい。夜の始まりさバニーガール AKASAKIさんの Bunny Girl 懐かしいような涙腺崩壊な楽曲」とポスト。15日には広瀬香美がXで「最近聞いている注目アーティスト。AKASAKI さんのBunny Girl 歌詞が心にスッとくるのは音と音に隙間があるからかな。聞いていて心地よい。応援してます」と称賛し、著名人たちが反応したこともあってか急速にその存在が世の中に知られることになった。 高校卒業後に音楽の道に進むことを両親に認めてもらうために、オリジナル曲のストリーミングヒットを目指しているというAKASAKI 。「Bunny Girl」のリリックビデオは本稿を公開した10月18日時点で400万回再生を突破しており、まだまだ勢いが加速していることから両親が認めてくれるのもおそらく時間の問題ではないだろうか。AKASAKIの若き才能がどこまで多くのリスナーに広まっていくのか、今後の活動に注目していきたい。 ■ 7 MEN 侍「アスパラベーコン」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場14位 7 MEN 侍が夏に東京・TOKYO DOME CITY HALLで開催した公演「7 MEN 侍 LIVE 2024 and JOY!」より、新曲「アスパラベーコン」のライブ映像が14位にランクインした。この曲名は、2021年2月5日にYouTubeで公開された「7 MEN 侍【新しい挨拶】大光ご立腹で考えた!」にて、新しい挨拶を考える企画の中でメンバーの佐々木大光が発した言葉が由来。これをきっかけに「アスパラベーコン」は7 MEN 侍がYouTubeを配信する際の定番の挨拶となり、2021年5月には“超巨大アスパラベーコン”を作る料理動画が投稿された。 この曲は菅田琳寧が作詞、音大卒の矢花黎が作曲と、メンバーが自ら制作。「アスパラ」「ベーコン」でコール&レスポンスするユーロビート調の曲で、一度聴いたら忘れられないほど中毒性が高い。アイドルソング、特にSTARTO所属アーティストの曲の中には、本人たちはいたって真剣に歌っているが歌詞などが意味不明なため、愛を込めて“トンチキソング”と呼ばれているものがあるが、「アスパラベーコン」は新たなトンチキソングの誕生と歓迎されているようだ。 コメント欄は「おすすめから来たけどなんだこのグループすげえな」「まじこのおもしれえグループなに笑 存在してくれてありがとう」などの書き込みが多く、この楽曲をきっかけに彼らの魅力にハマった人が急増している。 ■ 京本大我「WONDER LAND」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場67位 SixTONESの京本大我によるクリエイティブプロジェクト「ART-PUT」。9月3日にその第1弾楽曲「Prelude」のMVが公開されたのに続き、1カ月後の10月3日に早くも第2弾楽曲「WONDER LAND」が到着した。今回も自ら作詞作曲を手がけた京本は、楽曲についてXで「綺麗事が響かない時の、発散ソングとしてどうぞ笑」とポストしている。 MVを観てみると、黄色3本線のジャージや黄色いサングラス、今回の撮影のために染めたという緑色の髪を立ててメイクをしている姿など、どこかそのビジュアルは1998年に発表されたhide with Spread Beaverの「ROCKET DIVE」のMVを彷彿とさせる。またサビの歌詞「勝敗だって fifty-fifty / 真実だって doubt it doubt it」にはhideの2ndシングル「50%&50%」およびそのカップリング「DOUBT」の曲名が入っており、このことからも京本がリスペクトを込めて意図的にhideの要素を盛り込んでいることが考えられる。 楽曲を公開するたびに、SixTONESとは一線を画す新しい一面を見せている京本。次はどんな楽曲で我々を驚かせてくれるのだろうか? 「ART-PUT」から目が離せない。 ■ HONEST BOYZ「ズクダンズンブングン feat. はんにゃ.金田」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場88位 EXILEのメンバーで三代目 J SOUL BROTHERSのリーダーのEXILE NAOTO、DOBERMAN INFINITYのSWAY、m-floのVERBALを中心としたヒップホップグループ・HONEST BOYZの約5年ぶりのシングルが登場。今回はお笑いコンビ、はんにゃ.の金田哲を客演に迎えて、はんにゃ.の代表ネタ「ズクダンズンブングンゲーム」からインスパイヤを受けて制作された面白い試みの楽曲だ。 この曲が初披露されたのは、8月27日に東京・東京ガーデンシアターで開催されたNAOTO初のライブツアーのファイナル公演「NAOTO PRESENTS HONEST HOUSE 2024 “THE FINAL”」。サプライズゲストとして金田が登場し、NAOTO、SWAYと3人でパフォーマンスをして会場を熱く沸かせた。そのときのMCで彼らは楽曲誕生のきっかけについて、オリエンタルラジオの藤森慎吾を交えてSWAYと金田で食事をした際に、金田が「ラップがしたい」と言ったことが発端になっていると説明している。 低音の効いた心地いいアフロビートに「ズクダンズンブングン」という特徴的なフレーズが乗ったこの曲。はんにゃ.金田×HONEST BOYZならではの、お笑いとダンスミュージックが融合を果たした楽曲になっている。THE JET BOY BANGERZのメンバーやKADOKAWA DREAMSのダンサー、EXPG STUDIOの生徒たちが参加したキャッチーなダンスにも注目していただきたい。 ■ 真貝聡 ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。