今季6位のJ2仙台、攻撃強化で来季こそJ1復帰へ…庄子春男GMが語る未来への展望とは
23年6月8日にJ2ベガルタ仙台のゼネラルマネジャー(GM)に就任した庄子春男氏(67)。J1川崎を強豪に育て上げたGMは今季から本格的に仙台の改革に着手し、昨季16位だったチームはリーグ戦で6位と巻き返した。昇格プレーオフでは決勝で敗れたが、J1復帰まであと一歩のところまで復活させた。若手育成にかじを切ったクラブの今季を総括し、来季や未来への展望を聞いた。(取材・構成=山崎 賢人) ***** 今季は土台づくりの一年だったが、昨季の16位から6位に躍進。戦えるチームに変貌(へんぼう)した理由を庄子GMが話した。 「去年は走行距離やスプリント回数がJ1に比べたらだいぶ少なく、J2の中でも少ないというのがあって、キャンプから走り込んできた。守備でも切り替えの速さやラインコントロールを重点的に臨んだ。リーグの中でも良しあしはあるけど2連敗が2回と大崩れしなかった。けが人も出たけど監督、現場スタッフ、選手も一体感を持って戦っていたのを見ていたので、そういうのを含めてよくやってくれた」 走力に加えてフィジカルと基礎技術も年間を通して強化してきた。この土台を維持し、来季は攻撃の強化を図る。 「まだ攻撃はそんなに手を入れていない。来年は『リアクションからアクション』の部分を多くしていきたい。数値で言えば38試合で平均失点が1以内、平均得点が2以上を俺は目指していきたい。やっぱりアクションの部分を増やしていかないと(J1に)上がるのは難しい」 若手育成を掲げたクラブにとって、下部組織の成長も欠かせない。GMを始め森山佳郎監督やトップチームのスタッフらもアカデミー年代の試合に足を運び、視察をして目を光らせている。 「アカデミーはまだ結果は出ていないけど、いい取り組みをしている。当然勝負にこだわるけど、選手の個々を成長させる取り組みをしてくれている。あとはいい素材を持っている子どもたちが入ってくるためには、ユースやトップの成績を上げないといけない。川崎はトップも強く、ユースもプレミア(高円宮杯U―18)で結果を出していて、お金をかけずに強くなるいいサイクルに入っている。時間はかかるけど、それが理想なんだよな」 就任直後から3年以内のJ1昇格と、5年後にはアジア・チャンピオンズリーグの出場争い(J1で2位以上と天皇杯優勝クラブ)ができるチームを目標に掲げてきた。そのためには、ベガルタの魅力などをもっと強化する必要がある。現状は“サポーターの熱量”のみ。地域だけではなく選手たちにも愛されるクラブを目指し、安定した基盤を持ったチームづくりを目指している。 「仙台の魅力って今はサポーターしか思い浮かばない。あんな(敵地の)遠くまで来てくれて、ホームスタジアムの雰囲気もいい。成績もJ2で、環境だってそんなにいいわけではないし、サッカーのスタイルもまだ確立されていない。例えばJ2の選手にオファーをしたら『仙台のスタジアムの雰囲気でやってみたい』という選手もいる。だけどもっと強みを持っておかないと(他のクラブに選手が)全部行ってしまう。仙台が強かった時は要となる選手がいっぱいいたから、そういう選手をつくっていかないといけない」 ◆庄子 春男(しょうじ・はるお)1957年4月18日、仙台市生まれ。67歳。西多賀中から宮城工、東北学院大を経て80年に富士通に入社。富士通サッカー部で活躍し、86年に現役を引退。95年12月から同部の運営などに携わる。川崎フロンターレとして99年のJリーグ加盟後、強化本部長やエグゼクティブアドバイザーを歴任し、23年3月に退任。同年6月にJ2仙台のGMに就任。
報知新聞社