ル・マン24時間レースで響いた「天使の咆哮」は日本車メーカー初の総合優勝を飾った|マツダ 787B
世界三大レースに数えられるル・マン24時間レース。90年以上もの長い歴史を誇る同レースで、日本車メーカーとして初めて総合優勝を飾ったのがマツダだった。 【画像19枚】栄光のル・マンを制した 最初で最後のロータリーマシン。そのディテール そのマツダがル・マンに初めて参戦したのは1979年のこと。 それまでエンジンの供給やプライベートチームとのジョイントで参戦したことはあったが、事実上のワークス体制として挑んだのは79年が最初。マシンは前年に発売されたRX‐7(SA22C)をベースに13B型を搭載したものだったが、強力なライバルたちにはまったく歯が立たず、予選敗退という悔しい結果に終わった。そしてマツダはこの後も継続的にル・マンに参戦。 80年代半ばから参戦したトヨタや日産よりも経験値のアドバンテージはあったが、善戦こそするものの総合優勝を飾るまでには至らなかった。 そんなマツダが、ついに悲願を達成するときがやってきた。それが、第59回開催となった91年のレースだ。この年、トヨタと日産は欠場し、ワークス体制の日本車メーカーはマツダのみ。そんな状況のなか、優勝候補だったジャガーやメルセデスを抑え、トップでゴール。マツダがロータリーエンジンとともに長年挑んできた夢が、ついに現実のものになった。しかも55号車以外の787Bも、18号車が6位、56号車が8位に入賞し、すべてがトップ10に入る快挙を成し遂げた。 ル・マンの長い歴史のなかで、日本車メーカーが総合優勝したのは、この91年のみ。さらに、ロータリーエンジン搭載車の優勝も787Bが最初で最後。この栄光は、30年近くたった今でも語り継がれている。 正真正銘の「本物」! ル・マン24時間を制したマツダ787B さて、話を787Bの全ぼうに移そう。787Bはレプリカやエンジンレスなどを含めると、全部で5台製作されたと言われている。 しかしこの撮影した個体は、まぎれもない本物。ル・マンを制した55号車なのだ。 実際に目の前にすると想像以上の大きさに圧倒される。 ディメンションは全長4.8m弱、全幅2m弱、全高約1mというもの。全長全幅に関しては最近の市販車と比べても特別大きいわけではないが、その低さは圧巻だ。 なおシャシーはカーボンモノコックで、787よりもトレッドが拡大され、リアカウルおよびリアウイングの形状をリファイン。 787Bは、よりコーナリングを重視した仕様にモディファイされたのだ。 そして増加したダウンフォースによってコーナリングスピードも向上したため、ブレンボ製のカーボンブレーキを採用。これに伴い、タイヤ&ホイールは18インチに拡大された。 また、サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンを採用している。 当時の最新技術が盛り込まれた4ローターのロータリーエンジン 搭載されるエンジンは、4ローターのR26B型。 787の時点で、混合気燃焼を改善して出力と燃費を向上させる3プラグイグニッションやペリフェラルポート、セラミック製アペックスシール、吸気菅をボールベアリングとプーリーを使って伸縮させるリニア可変吸気システムといった当時の最新技術が盛り込まれていた。 787Bではさらにブラッシュアップを施し、レスポンスやフィーリングが向上したのだ。 とはいえ、レシプロ勢とは100ps以上も差があったと言われている。それを考えると、シャシーを含めた基本性能が、いかに高かったかということが分かるだろう。 SPECIFICATIONS マツダ 787B 全長×全幅×全高(㎜) 4782×1994×1003 ホイールベース(㎜) 2662 トレッド前/後(㎜) 1534/1504 車両重量(㎏) 830 エンジン型式 R26B型 エンジン種類 4ローター・ロータリー 総排気量(cc) 654×4 最高出力(ps/rpm) 700/9000 最大トルク(㎏-m/rpm) 62.0/6500 サスペンション ダブルウイッシュボーン(前後とも) ブレーキ ベンチレーテッドディスク(前後とも) タイヤ 前305/660R18後360/710R18
Nosweb 編集部
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