「光る君へ」松原客館でも知られる福井県・気比の松原へ。作家たちが愛した越前の名勝地をたずねる
#305 Kehi no Matsubara気比の松原(福井県)
前回に引き続き、今年3月に北陸新幹線が延伸されて俄然行きやすくなった福井県・敦賀を拠点とするビーチをご紹介します。 【画像】この地に住んでいた紫式部もこの景色を眺めたかも。 気比(けひ)の松原は日本海に面した敦賀湾の最奥部、長さ1キロのビーチに奥行き400メートルにわたって松林が広がっています。三保の松原(静岡県)、虹の松原(佐賀県)とともに“日本三大松原”のひとつとされる、由緒正しいビーチです。
大河ドラマ「光る君へ」でも注目!
もともとは氣比神宮の神苑だった、気比の松原。万葉集や日本書紀に詠まれ、江戸時代末期には歌川広重の「六十余州名所図会」の「越前 敦賀気比ノ松原」に描かれたことも。敷地内には、明治天皇が立ち寄られたことを漢詩に詠んだ勝海舟の詩碑や、高濱虚子の句碑もあります。 さらに『源氏物語』を記した紫式部もこの地に住んでいたとか。現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」(NHK)でも、気比の松原付近にあったとされる「松原客館」や越前の人々との交流が描かれています。 国を代表する作品や歴史に名を刻む著名人が思わず筆を取る名勝、気比の松原。どんな絶景が待っているのでしょう。
この地が「一夜にしてできた」という伝説も
県道から約1万本ものアカマツとクロマツの林を抜けて、海へ向かいます。砂地すれすれまで枝を伸ばした松の古木の脇を抜けて砂浜へ。 松林のちょっとした暗がりから、一気に光あふれる海の開放的な眺めが広がります。緩やかに弧を描く浜辺の左手には三内山など小高い山が重なり、右手は港のコンテナ。砂はキビ色で波打ち際は小石系。透明度も高そうです。 驚くほどの絶景というよりも、空と海を眺めて憩うみんなのビーチという感じでしょうか。夏は海水浴場として開放され、花火大会や灯篭流しなども行われるそう。その一方で、冬は雪化粧の松林と荒れた日本海の、厳しくも雄大な自然。季節により、景色も変わります。 そんな気比の松原は、“一夜松原”とも呼ばれています。これは、伝説に基づくもの。 聖武天皇の頃、この地に異賊が来襲してきました。すると、浜辺一帯が突然震動し、一夜にして松林が出現。その松の梢に氣比神宮の使い鳥であるシラサギたちが無数に舞い降り、その光景はまるで風にはためく旗指物のよう。それを見た敵勢は数万の軍勢と勘違いし、逃げ去っていきましたとさ、という話。 地元では「けいさん」と親しみを込めて呼ばれる氣比神宮。地元に迫る危機に一肌脱いだに違いないと、信じたくなる伝説です。