「おもちゃとジェンダー」老舗メーカーが挑む難題、子どもが「自らの好奇心に従えない」複雑な要因とは
磁石でくっつく知育玩具「ピタゴラス」シリーズや抱き人形「ぽぽちゃん」などを手がける老舗玩具メーカー、ピープル。価格競争を勝ち抜く戦略として、「子どもの好奇心」を深掘りする商品展開やマーケティングを強化している(詳細は8月4日配信記事:知育玩具「ピタゴラス」爆売れでも会社が抱く焦燥) 【写真】ピープルが生んだあのヒット商品にも実は悩みが ただ、そうした戦略で売り上げ成長を目指すにはさまざまな課題もある。顕著なのは子ども自身や親の意識、そして業界全体に横たわる「ジェンダーの壁」だ。桐渕真人社長に、その分析を聞いた。
■おもちゃの「外箱」で遊びだす子ども ――なぜ「好奇心」を軸に据えた研究開発を重視するのでしょう? 子どもの好奇心の研究は、実はまだ進んでいない部分も多い。つまりここを突き詰めることで、ピープルが好奇心研究の最先端になれる可能性がある。価格競争も激しくなる中、レッドオーシャンではない独自の成長領域として切り開いていけると思っている。 他社のものも含め、さまざまな玩具を乳幼児に与えてどんな反応をするかを観察してみるのだが、例えばいざ買ってパッケージごとわたすと、おもちゃ本体ではなく外箱で遊びだすというのはよくあること。「この透明な物体は何だろう?」とそちらに興味を持つのは素直な反応だ。
このような反応を受け止めた商品づくりをしようというのが、ピープルの開発姿勢なのかなと思う。コロナ禍でできなくなってしまったが、以前は社内に設置したモニタールームで週に3、4回、乳幼児とその親を招いて遊んでいるところを観察し、商品開発につなげていた。 希望に応じ、こうした手法について他社にシェアすることはあったが、それでもここまで深く「好奇心」という部分に根差した開発を行っている会社はうちだけだと思っている。
――子どものためのものでありつつ、選んで買い与えるのは親。純粋な好奇心とはどうしても隔たりができてしまうようにも感じます。 悩ましい部分だ。商品開発においても、どちらかというと親、とりわけお母さんの言葉というのを強く意識してしまうことがある。気づいたらお母さんのための商品を作っていたということもあるし、実際そういう商品も販売している。 ただ、開発の原点はあくまで子ども。それを第一に考えたい。そうしてできた商品を、親御さんにどう伝えて買ってもらうかというのはまた次の話、というふうに分けて考えていけばいいのかなと思っている。