良いケアマネジャーと悪いケアマネジャーの見分け方 【知っておきたい介護の基礎知識】
人口の3分の1が65歳以上の高齢者である現代社会において、介護問題は多くの人々にふりかかってくるものです。 しかし、知識を持たないまま介護を始めてしまうと、介護されるご本人も、その家族も苦しい生活を送ることになってしまう場合があります。そして、それは、介護される方のOuality of Life(生活の質)を下げてしまうことにもなります。 そこで、自身の親の介護を経験し、リハビリ専門デイサービスを経営する神戸利文さんと、理学療法士の上村理絵さんの共著『道路を渡れない老人たち』から、知っておきたい介護の基礎知識をご紹介します。 文 /神戸利文・上村理絵
独りよがりのケアブランを押しつけるケアマネジャー
介護保険サービスの利用者にとって、「悪いケアマネジャー」とは、どんなケアマネジャーでしょうか? それは、利用者のニーズをきちんと拾えていないケアマネジャー、独りよがりのケアブランを押しつけてくるケアマネジャー、融通の利かないケアマネジャーです。一般のサービス業なら、利用者のニーズをきちんと拾えていなければ、お客さまに来てもらえず、事業を続けていくことはできません。 ところが、介護業界では、介護保険制度を利用して売上が立てられるからか、かつての老人福祉法に基づく措置制度だったときの悪しき習慣が残っているのか、サービス業であるとの自覚を持たずに仕事に就いている人がいます。ケアマネジャーもその例外ではなく、なかには利用者のニーズを本人や家族から丁寧に聞き取らずにケアブランを作成してしまうケアマネジャーもいるのです。 そして、それよりもさらに厄介なのが、自分の限られた経験に基づく独断と偏見によって、独りよがりのケアブランを作成するケアマネジャーです。 こうしたタイブのケアマネジャーは、本人や家族のニーズを聞き流し、リハビリテーション専門職の客観的な評価にも耳を傾けることがありません。挙句の果てに、何の根拠も示さず、本人が行きたがらないデイサービスに無理やり 通わせたり、重症だからリハビリはできないとあきらめさせたりするのです。周囲の関係者が異論を唱えても、「ケアブランをつくるのは、私の権限だから」と言い放つケアマネジャーさえいます。これでは、誰のためのケアブランなのか、わかりません。 介護保険制度には、細かな決まりごとが数多くあります。たとえば、デイサービスのスタッフは、送迎の際にも、利用者の家の中には、基本的に立ち入ることができません。また、ホームヘルバー(訪問介護員)は、ケアブランに記載されていないサービスを行うことは一切認められていないのです。 このような厳格なルールの中でサービスの提供をしなければならないため、ケアマネジャーが先々を見越した対応をしていないと、利用者にさまざまな不便が生じやすくなってしまいます。 制度の問題でもあるので、「悪い」というのは少々酷かもしれませんが、介護を受ける人やその家族にとって、融通の利かないケアマネジャーがありがたくないのは紛れもない事実でしょう。