銀シャリ橋本直さん「細かいところが気になりすぎて」インタビュー 喋り言葉のテンションで「手が追いつかなかった」
芸人のエッセイが好きな理由
――いま、橋本さんの目の先にいる人は。 うーん、……でもなんですかね。昔のテレビ、昭和のテレビが僕は好きなので。観るのと、勉強しようとするのとはタイプが違う感じです。だから芸人さんのエッセイをよく読みます。ほとんど読んでいるかも知れません。ハライチ岩井勇気くん、オズワルド伊藤俊介くん、ヒコロヒーさん、ふかわりょうさん、いとうあさこさん、光浦靖子さん……。直接喋ったことのない人でも、エッセイを読むと「なるほど」と思うんです。1冊読むだけで、その人と食事する以上の情報量を得られる。そこが好きなのかもしれません。 ――光浦さんが50歳で留学する直前、「好書好日」で取材に応じてくださいました(前編 /後編)。本からは、それこそ光浦さん自身の心象風景をのぞき見るような印象があって心揺さぶられました。 しかも、本の方が核心をついているじゃないですか。喋っていると照れるし、本音と建前のラインを意識してしまうけれど、本だと一気に超えて吐露してもらえる。だからお笑い芸人さんの本を読む機会が増えました。 ――その体験が今回の執筆にも活(い)きているのでは。特にツッコミのリズムが心地良いです。 ありがとうございます。めっちゃ嬉しいですね。ラジオやテレビだと、たまに思ってもいなかったところへ話が勝手にたどり着くことがあります。「そんなこと、言うつもりもなかったのに、なんでそんなん出たんやろ?」という瞬間があるんです。文章も同じでした。書いていて、なんか急に思いがけない言葉が出てくる時があって、楽しかった。「こう終わろう」「こうしよう」と思っても、まったく違うところへと動き出していくんです。 ――書くことで気持ちが浄化される面もあったのでしょうか。 それ、めっちゃあると思います。モヤモヤした気持ちがすっきりしました。また書きたい。あと、ラジオで喋るのと、漫才・コントのテーマとは別に、「これは、文章の方が面白さを伝えられるかな」というのを探りたい。文章での情景の書き方を探りたいです。まだ喋り言葉に寄って書いちゃっている。まあ、そこも、無理して書き言葉にしても、躍動感が出ないかもしれないけど。とりあえず今回はパッションで書く方法にしました。テンション、熱量を大事に書きました。 ――今後、「このネタは文章向き」というように「フォルダ分け」ができていくのでしょうね。 そうできたらいいなと思います。これからは「静かなる怒り」みたいな表現ができたらと思います。でもそれはそれで、今回は良かった。楽しかった。