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ホンダCBR1000RR-Rエンジンマニアック解説#3:過激なフィンガーフォロワー配置

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数えきれないほどの開発経験を持つプロですら引きつけられる。それほど’20ホンダCBR1000RR-Rのエンジン設計は突き抜けているのだという。史上最強の自然吸気インラインフォーとして歴史を刻んだRR-Rは、性能を追求し続けてきた直4の最後の金字塔となるかもしれない。本ページでは、他のそれとは攻めっぷりが激しく異なるフィンガーフォロワーの配置について解説する。 〈関連写真×4枚〉ホンダCBR1000RR-Rエンジンマニアック解説#3:過激なフィンガーフォロワー配置

バルブの挟み角を極限まで狭めるために

吸気(IN)、排気(EX)カムシャフトの距離(ピッチ)を狭めることができると、シリンダーヘッドの前後幅を縮めてヘッドを軽くでき、わずかながらエンジン前後長も縮められます。そして何より、バルブ挟み角を狭められるので燃焼室をコンパクト化でき、ピストンの中央を盛り上げなくても高い圧縮比が得られるようになります。高性能エンジンにとって、バルブ挟み角を小さくすることは大変意義のあることなのです。 RR-Rのエンジンはそのための工夫も見ものです。従来の直打式バルブの場合、IN/EXカムシャフトのピッチの限界は、カムを固定するハウジングボルトとプラグホール、この両者の位置関係で決まる場合が多いです。フィンガーフォロワー式のRR-Rでも、カムハウジングのボルトがプラグホールぎりぎりに配置されていることが分かります。すなわち、もうこれ以上はカムシャフト同士を近づけることはできないところまで来ているということです。 〈写真1〉RR-Rのカムとフィンガーフォロワー周辺の構造図。プラグホールを避けるためか、フォロワー摺動部は若干のオフセットを持つ。 〈写真2〉この写真の見せ場は、ハウジングボルトがギリギリまでプラグホールに寄っていることと、そこを突き刺すように配されるフィンガーフォロワー軸。RR-Rの攻撃的レイアウトを示す好例だ。 しかし、BMWはRR-Rほどカムシャフト同士を寄せて配置できていません。それはなぜかというと、これ以上寄せるとIN側フィンガーフォロワーのピボット軸がプラグホールを貫通してしまうからです。ここが貫通してしまうとオイルがプラグホールの中に漏れてしまい、大変面倒なことになります。EX側フィンガーフォロワーはピボットが前側にあるので、そちらは問題なくカムシャフトをプラグホールに寄せられているのですが。 この「プラグホールにフィンガーフォロワーの軸が貫通してしまう問題」は、フィンガーフォロワーの軸の加工をヘッドの端から長いドリルを通して開けているために発生するのです。これを解決すれば、カムシャフトをもっと中央に寄せることができるわけです。 そこで、RR-Rではこの穴あけ加工をやめ、各プラグホールの間にフィンガーフォロワーの軸を支持する別部品を設けて、これをヘッドの上から締め付けるという構造を取っているのです。こうすることでフィンガーフォロワー軸の位置をかなり自由に決めることができます。 〈写真3〉【5分割した軸を別体ブロックで固定する】通常のフィンガーフォロワー軸は上のGSX-Rのように8バルブ分を1軸で突き刺す(シャフト自体は分割)ような構成だが、RR-R1または2バルブごとにシャフトを分割し、プラグホールを挟むように配置。別体ブロックで固定する。見るからに部品数の多い、コストが高そうな構造だ。 その結果、IN側カムは目いっぱいプラグホールに寄せられ、バルブ挟み角は従来型の11度から9度まで小さくできていますし、EX側のフィンガーフォロワー軸もBMWと反対のプラグ側に配置でき、ヘッドのEX側もコンパクトになっています。こうしないと2次エアのリードバルブ(後述)は取り付けられなかったと思いますから、この構造はかなりのコンパクト化に貢献していると言えそうです。 ちなみに、F1はこの方式をピボットブロック式などと呼んでいたかもしれません。まさにレーシングテクノロジーの賜物ですし、相当コストもかかっているでしょう。ここまでやるか? という感は否めませんが、そこまでしてもコンパクト化すべきと考えた、設計者の情熱と強い意志には感心します。 (エンジニ屋氏の解説、続く) 〈写真4〉国内外の直4SSは全てフィンガーフォロワー式だが、支持軸の配置方向はは全車共通。BMWのIN側カムがプラグホールに寄せきれていないことが分かるが、これは他社のSSでも同様の傾向だ。(上左)S1000RR (上右)YZF-R1 (下左)GSX-R1000R (下右)ZX-10R

――― 【マニアック解説:エンジニ屋】数多くのエンジン設計に携わってきたベテラン設計者。とりわけ高出力エンジンを愛し、その方程式を熟知するだけに、RR‐Rへの驚きを隠さない。 ●解説:エンジニ屋 ●写真:真弓悟史、ホンダ

WEBヤングマシン編集部

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