不祥事に揺れる野村証券が打った「再発防止策」は社員の監視強化、強盗殺人未遂に先物相場操縦で業界の信用に傷
証券ガリバーの不祥事が業界に波紋を広げている。12月3日、証券最大手の野村証券が急遽会見を開いた。7月28日に広島市で起きた強盗殺人未遂事件で、同社の元社員が逮捕・起訴されたことを受けてのものだ。 【図表】野村証券が打ち出した11項目の再発防止策 もっとも、逮捕されたのは10月30日、起訴されたのは11月20日のこと。この間、野村証券は顧客の自宅訪問時の事前承認制や、営業企画担当執行役員の広島派遣を発表しているが、公の場で詳しい説明はしてこなかった。逮捕・起訴後に初めて行う会見とあって、会場にはテレビ局など多くのメディアが集まった。
■再発防止へ、社員の行動をつぶさに管理 「業界全体、金融ビジネスのあり方全般に不安を与えてしまった。金融機関は信頼で成り立っている。本当に重く受け止めている」。野村証券の奥田健太郎社長は報道陣を前に、再発防止を誓った。 対応策は11項目に上る。重視したのは「予兆検知」と「行動管理」だ。会社貸与の携帯電話やドライブレコーダーを通して社員の行動をつぶさに管理するほか、年に1度、一定期間連続の休暇取得を義務化する。その休暇中に、社員が顧客とどのようなやり取りをしていたのかをチェックするためだ。
人事評価のあり方も職業倫理やリスク管理の項目などを拡充する内容に見直すほか、非管理職に対しても360度評価を導入するなど人事制度を大幅に変える。奥田社長は「今までも社員の不正行為に対して対策を講じてきた。それらに加えて強化できることはなんだろうかを考えた」と、今回の対応策について説明。奥田社長ら役員10人の報酬自主返納も発表した。 今回の事件は、野村証券の内部管理体制の課題も浮き彫りにした。その1つが会社としての対応の遅れだ。
会見での説明によると、会社が事態を把握したのは、公表よりもはるか前だった。事件5日後の8月2日、会社側は元社員から、顧客宅での火災について警察から放火の疑いが持たれていること、訪問時に顧客の現金を奪ったとの申し出を受けていた。 これを受けて8月4日に元社員を懲戒解雇。8月2日の段階で社長を含む経営幹部にも事件の知らせは入っていたという。 その後、元社員は10月30日に広島県警に逮捕された。翌日には容疑者が野村証券の元社員であることが大きく報じられたにもかかわらず、会社としての正式な発表はなかった。逮捕2日後の11月1日には親会社である野村ホールディングス(HD)が中間決算を発表。北村巧CFOによる決算会見も開かれたが「捜査に関することなのでコメントは控えたい」「まだ事実確認中」といった回答に終始した。