ハン・ガンさん、ノーベル賞授賞式に立つ…「忘れることは決して目標にはならない」
ノーベル財団「歴史的トラウマの中、人間の弱さを探求した作品」
作家のハン・ガンさんをはじめとする2024年ノーベル賞受賞者のための授賞式が10日(現地時間)、スウェーデンのストックホルムで開かれた。 現地時間の同日午後4時(韓国時間11日午前0時)、ストックホルムのコンサートホールで開かれた授賞式は、ノーベル財団理事会のアストリッド・ソデルベリ・ビディング議長の祝賀演説で幕を開けた。ノーベル賞授賞は物理学賞、化学賞、生理医学賞、文学賞、経済学賞の順に行われた。 アジアで女性として初のノーベル文学賞を受賞したハン・ガンさんは、この日初めてノーベル賞を象徴するブルーカーペットを踏み、スウェーデン国王カール16世グスタフからメダルと証書を授与された。ビディング議長は演説で「今年の文学賞は、歴史的トラウマを背景に人間の弱さを深く探求した作品に授与された」とし「(ハン・ガンの作品は)変化に向けた熱望と同じくらい奈落は常に近くにあることを示し、人間の存在の悲劇的な条件に光を当てる」と授賞の意義を語った。 スウェーデン・アカデミーの終身委員の一人でありノーベル文学賞の審査委員のエレン・マットソン氏は、ハン・ガンさんのための授賞演説で、彼女の作品が持つ力について語った。「ハン・ガンの文章には白と赤が共存する」とし「白は(小説の)語り手と世界との間に保護のカーテンを引いているが、同時に悲しみと死の色でもある。赤は生命を象徴するが、苦痛と血、ナイフで切られた深い傷も表す」と述べた。続けて「彼女の声は魅惑的でやわらかさがあるが、これを通じて言い表せないほどの残忍さや、取り返しのつかない喪失を語る」と表現した。 特に2021年作『別れを告げない』と2014年作『少年が来る』の一部に触れ、「生きている者と死んだ者、そしてどちらに属するかまだ決められていない人々の間で出会いがなされる場所」の意味を伝えた。「ハン・ガンの作品の中で、人々は妨げられることなく動き回る。忘れることは決して目標にはならない」とし、残酷な虐殺の過去を忘却せずに絶えず問いかける力を強調した。また、「ハン・ガンの世界では、人は傷つく弱い存在だが、それでも一歩踏み出し、もうひとつの質問ができる十分な力を持っている。光が薄れても、死者の影が壁の上を動き続ける。何も過ぎ去るものはなく、何も終わることはない」と語った。 ノーベル財団は、民主的で包摂的な社会制度と国の成長の関係を究明したノーベル経済学賞受賞者(ダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソン、ジェームズ・ロビンソンの各教授)については、「民主主義が揺さぶられ、独裁化が進む現在の状況の中で(授賞の意味が)考慮される」と述べた。これに先立ち、経済学賞を受賞したジェームズ・ロビンソン教授は韓国の12・3内乱事態について「歴史的に包摂的な制度を損ねたケースは非常に多かった」と評価している。 ノーベル財団は、核の脅威が膨らむ世界に対する声もあげた。約80年にわたり核兵器のない世界を叫び続けた功労が認められ、ノーベル平和賞を受賞した反核団体の「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」を紹介しつつ、ビディング議長は「こんにち、核兵器保有国が戦争と紛争を起こし、核兵器の脅威が再び台頭する状況で、ノーベル平和賞は実存的な次元の意味を持つようになった」と述べた。また、今年のノーベル物理学と化学賞受賞者を中心に、すべての国が核兵器を二度と使わないよう保障し人類を保護することを訴える2024年のマイナウ宣言に署名したと伝えた。 3年間続いているウクライナ戦争と核の脅威、民主主義の危機が目撃されている世界に向けて、ビディング議長は「科学と文学、平和は、こんにちの危険な問題を解決するための様々な道を示し、われわれ人類の未来を決めるのは盲目的な運命ではないということを想起させる」とし「世界を変えることは私たちの手にかかっている」と語った。 ストックホルム/チャン・イェジ特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)