「全ての表現の奥にはバイブレーションがある」インディーズ映画の巨匠が念願の映画化 安部公房の代表作『箱男』
■「もう二度とできないことをやろう」 最新作『箱男』のパンフレットには、「ジャパン・インディ・シネマの最前線を駆け抜けてきた鬼才」と紹介されていました。その石井監督が8月31日、古里・福岡市にある書店「ブックスキューブリック箱崎店」でトークショーに出演したので、行ってきました。聞き手は、ブックスキューブリックの経営者、大井実さんです。 石井監督:時代は変わっていくので、「その時点で作ったものが、永遠に新しく、変わらない力、命を持ったものにしたい」という気持ちが強いんですよね。初めて見る方には、新作ですから。ただ、自分が監督した映画が、後の方たち見られると全く思ってなかったんです。当時ビデオもないですから、作ったら終わり。よっぽどの名作じゃない限り、リバイバルはなかったので。要するに、ちょっと演劇に近い感じで。 大井実さん:一回性に… 石井監督:そう、一回性ですね。だから、「もう二度とできないことをやろう」っていう思いがすごく強かった。「これを今、形にして残さなければ、永遠にこれはない」「それを誰もやらないんだったら、私がとにかくやりたい」。それは、今でも変わってないんですけど。 映画は、初めて見る方には新作だ。誰もやらないんだったら、私がとにかくやりたい。監督の言葉がとても面白いのです。「もう二度とできないことをやろう」と言いながら、リバイバルは当時なかったので「一回性」。永遠に残るものを一回性で作るという矛盾も、インディーズっぽいなと思って聞いていました。 ■世界的作家の問題作『箱男』 原作の『箱男』は、戦後の日本を代表する作家の一人、安部公房(1924~93)が1973年に書いた小説です。私は読んだことはなかったのですが、『砂の女』などはあまりに有名で、「日本を代表する作家」と思われていた人です。映画のパンフレットには「2012年、読売新聞の取材により、ノーベル文学賞受賞寸前だったことが明らかにされた」とありました。「世界的な作家」と言っていいでしょうね。